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2025.08.03 life

【特集】涼を感じる夏のしつらい / 簾戸で風を感じる ─ 旧小澤家住宅

エリア

新潟市

ことしの夏も、うだるような暑さが続きます。
少しでも心地よく過ごせるように
夏のしつらいを整えてみませんか。
五感で涼を感じる、日本の知恵がそこにはありました。


すだれや簾戸(すど)を用意する夏支度
風を通す知恵と機能美

新潟市中央区、かつての新潟町にたたずむ旧小澤家住宅。毎年6月初旬になると、通り土間に面する座敷などの障子戸が簾戸に入れ替えられ、屋敷が夏の装いとなる。簾戸は夏障子などとも呼ばれ、直射日光を遮り、隙間から風を通して、室内を快適にしてくれる建具だ。「数も多いので、例年大学生に手伝ってもらって入れ替えをします。簾戸が入るとスッとした気持ちになるというか、夏に向けて気分が改まる感じがしますね」と話すのは館長代理の若崎敦朗さんだ。

通り土間に面して簾戸が入った夏の小澤家。天井高が取ってあることで、暑い空気を上に逃がす効果もある

小澤家は米穀商から回船経営に乗り出した新潟を代表する商家。その屋敷は明治時代の豪商の暮らしぶりを今に伝えている。表向きはむしろ質素な印象だが、内部はえりすぐりの材を使い、技巧を凝らした造り。さらに蒸し暑い新潟の夏を乗り切る知恵や感性も、あちこちに見つけることができる。

約1,600平方メートルの敷地の中に、主屋や土蔵などの建物がある旧小澤家住宅。旧新潟町に現存する町家としては最も古い建物の一つ。新潟市文化財に指定されている

簾戸のほか、「茶の間」には、肌触りが爽やかな籐(とう)のむしろを敷き、金屏風(びょうぶ)は涼やかな衝立(ついたて)に入れ替えるのが夏支度。通り土間の窓と中庭に面した窓を開ければ、空気の通り道が生まれ、簾戸越しに風が抜けていく。そして貴賓室である「百合ノ間(ゆりのま)」に掛けられるのは、繊細で上品な造りのすだれ。すだれ越しに庭園の鮮やかな緑が透けて見え、視覚から涼しさを演出してくれる。庭園は日本三景の松島(宮城県)がモチーフで、芝生が海、盛り土が島を模している。すだれの先に海原を想像するのもまた、涼やかさを感じる楽しみ方だ。

籐のむしろを敷いた、夏しつらいの茶の間。すだれを使った衝立と涼やかな色合いの生け花が一層の爽やかさを演出。簾戸やすだれはプライバシーを守りながら、風の通りを良くしてくれる優れものだ

百合ノ間から庭を望む。薄くて繊細なすだれそのものも美しい

冬も緑があるようにと、常緑樹を中心に構成されている庭園。軒先の藤棚が陰を落とし、日差しを遮ってくれる


旧小澤家住宅
住所│新潟市中央区上大川前通12番町2733[地図]
電話│025-222-0300
時間│9:30~17:00(観覧券販売は16:30まで)
定休│月曜(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日(土・日曜の場合は火曜)、年末年始、他臨時休館あり
料金│大人260円、小・中学生130円

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