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2026.07.15 life

ワインづくりの芯は“ヴィニュロン”(=その土地に暮らす人)/カンティーナ・ジーオセット(新潟市)

エリア

新潟市

新潟の気候風土を映す個性豊かな10のワイナリーが集う「新潟県ワイナリー協会」加盟社によるリレーコラム。今月は株式会社セトワイナリー(新潟市西蒲区)栽培&醸造責任者の瀬戸潔さんが、ワイン造りと地域への思いを紹介します。


今年もこの季節がやってきた。新潟市立越前小学校の6年生が授業で、ワイナリーにやってくる。ワインも飲めない12歳の子どもたちがなぜワイナリーに? 
わたしには夢がある。13年前にワイナリーをはじめた時、この地域からワインの醸造やブドウ栽培に興味を持ち、この仕事を志す人が現れてくれることを願った。

地元・越前小学校の総合学習

ワインは暮らしそのもの

ヨーロッパではワインは特別なお酒ではない。その土地の人が、その土地の料理とともに楽しむ地酒であり、日々の暮らしを支える存在だ。日本人にとっての日本酒のようなものであり、味わいの違いよりも、どこで誰が造るかが大切。そして何より、その土地の料理とよく合う。地酒とは本来そういうものだろう。社会人になって出会ったイタリアワインは、私に「ワインは暮らしそのもの」だと教えてくれた。世界的に知られるワイン産地も、もともとはその土地の暮らしに根ざしたものであった。その土地らしさが、時を経て多くの人に求められるようになった。ローカルの価値が、結果として世界へ届いていくのだと思う。

カンティーナ・ジーオセット(新潟市西蒲区)

ワインづくりの芯はヴィニュロン=その土地に暮らす人

山形のタケダワイナリーの岸平典子さんが「ヴィニュロンとは、その土地に暮らす人なんですよ」と教えてくれた。フランスでワインを学んだ彼女の言葉は、私が探していた答えのように感じた。それまで私は、毎日10キロほど離れた場所からワイナリーへと通っていた。その言葉に背中を押され、ワイナリーのある角田浜へ移り住むことを決めた。暮らし始めて分かったことがたくさんあった。朝4時ごろに降る雨。風向きの変化。雷鳴。朝露。空気の匂い。通っているだけでは気付けなかった、この土地の日常が少しずつ体に入ってきた。「その土地に暮らす人」。岸平さんの一言は私にワイン造りの芯をくれた。先輩の言葉は宝だ。

ツヴァイゲルト/ジーオセット(赤)

ネッビオーロ / テッレニイガターネ(赤) イタリアで最も高貴な品種ネッビオーロ。初の単一ヴィンテージは感慨深いものがあります

カンティーナ・ジーオセット ワインシリーズ

二十歳になった卒業生への贈り物

毎年、12歳の子どもたちとブドウを収穫している。造ったワインは8年間の時を経て、二十歳になった卒業生へ贈られる。時間が味わいを育てる赤ワインだからできる取り組み。二十歳になったばかりの卒業生には、少し渋く、少し酸っぱい赤ワイン。「急いで飲まなくてもいいよ。悪くならないから。白ワインやスパークリングから飲み始めて、ワインの味がちょっとわかったなってタイミングで家族や仲間と飲んでね」と言葉を添えます。先日、一人の卒業生が訪ねてきた。「瀬戸さんの赤ワインを開ける前に勉強しておきたくて。」そう言ってうちの白ワインを買って帰った彼。勉強はうまくいったかな。あのワインはもう開けたかな。気に入ってくれていたら嬉しいなあ。


人数が少ない学年の年には、授業が終わると紅茶を淹れる。リーフティーをリチャード・ジノリのカップに注ぎ、ビスケットを添える。子ども扱いせず、一人の人として迎える。慣れないカップを両手で持ちながら、少し誇らしげな表情を見せる子どもたちを見るのが、私は好きだ。小学生の頃、私は鉄道が好きだった。駅員さんが掲出を終えたポスターをくれた。切手を集めていた頃には、家の近くの郵便局長さんが古い切手を額面で譲ってくれた。名前も顔も思い出せない。子どもたちと接していると、その頃の自分をちょっとだけ思い出す。優しくしてくれた大人のことと共に。地域で暮らす一人の大人として、誰かの記憶に少しだけ残る存在になれたらと思う。

子どもたちから届いた授業の感謝状。毎年趣向を凝らしていて楽しい!

ワインを造る仕事をしているが、子どもたちに渡したいものはワインだけではない。この土地には誇れる仕事があること。生まれ育った場所にも、外から人が訪れる理由があることを。それを少しでも感じてもらえたら嬉しい。いつか、この子どもたちが外の世界へ出た時、「自分の故郷には、こんな仕事をしている大人がいた」と思い出してくれたら嬉しい。その記憶が、いつか故郷を思う力になるなら、ヴィニュロンとしてこれ以上の幸せはありません。

ブドウ畑に巣を作る野鳥・モズのひな

ヴィニュロンにしか見ることのできない日の出の畑の景色 水蒸気が立ち上がり霧が出ています

角田山(新潟市)の麓に広がる葡萄畑


【プロフィール】
株式会社セトワイナリー
栽培&醸造責任者 瀬戸 潔

東京都八王子市出身。脱サラし2010年にワイン造りの世界へ。カーブドッチワイナリー(新潟市)での研修を経て独立し自身のワイナリーを立ち上げた。地域の食文化の保存と継承のためのワイン造りを目指す。日本では珍しいイタリア品種への取り組みが特徴。醸造歴15年。まだまだ挑戦の日々が続くワイナリー。 

カンティーナ・ジーオセット
住所|新潟県新潟市西蒲区角田浜1697-1
電話|0256-78-8065
HPhttps://ziosetto.base.shop/