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2024.07.07 special

「やまもとやまCAFE 本」店主 橋本実樹さん / 豊かな自然に魅せられて 心地いい風吹く山頂でカフェ営業

シリーズ

assh表紙の人

エリア

中越

かつてのスキーロッジ活用 山本山の魅力を多くの人に

新潟県小千谷市の市街地から、車で15分ほど。なだらかに広がる山本山高原の山頂に、ぽつんと1軒、山小屋風の建物が立つ。緑豊かな小道を行くと、「やまもとやまCAFE 本」を営む橋本実樹さん(30)がにこやかに出迎えてくれた。

山頂で聞こえるのは鳥のさえずりと草木のざわめきだけ。店からは、遙か遠くの山々や麓に広がる田畑が見渡せ、日常を忘れてゆったりとくつろげる雰囲気だ。

山本山高原には、かつて家族連れでにぎわうスキー場があったが、2004年に発生した中越地震で被災したことを機に廃業。カフェを営む建物は、当時ロッジとして使われていたという。

内装には、閉校した小学校で使われていた校長室のソファや理科室のテーブルなどを活用。「店内の本や棚も、地元の皆さんが提供してくれたり作ってくれたりしたもの」と、周囲の支えに感謝する。

田舎暮らしに憧れ移住 名物は地元野菜たっぷりカレー

東京都出身の橋本さんは、田舎暮らしや農業に興味があったことから、2018年、地域おこし協力隊として小千谷市に着任した。「小千谷という地名も知らなかったけど、一生に一度は雪国で暮らすのも面白そうだと思って」とほほえむ。

任期中は山本山近くの農業法人に所属し、カリフラワーや雪中ニンジンなどを栽培する農業支援に取り組んだ。「今まで食べていた野菜と味が違いますね。甘みがあって本当においしい」と話す。

地元の人々とのふれあいや自然に魅せられ、カフェを開いたのは、協力隊の任期最終年の2020年。チャレンジショップとして3カ月間営み、翌年、グリーンシーズンだけ営業するカフェとして本格オープンした。

山本山の魅力を問うと、「四季折々に見られる景色。自然が豊かで生き物もたくさん。昨日はカモシカを見かけたんですよ」と目を輝かせる。

冬の雪景色に始まり、春は菜の花畑、麓の田植えが終われば眼下に広がる田んぼのパッチワーク、夏にはブルーベリーが実り、広大なヒマワリ畑にソバ畑、と次々に見どころが挙がる。秋の早朝には雲海が見られることもあり、猛禽類が優雅に舞う「タカの渡り」の名所でもあるという。

カフェの名物メニューは地元野菜をふんだんに使った「やまもとカレー」。トマトやタマネギなどをベースに、子どもでも食べられるように、スパイスは辛さを控えめにブレンドした。今春からは、レトルト食品としても販売を開始。カフェや小千谷市総合産業会館サンプラザで販売するほか、小千谷市のふるさと納税返礼品としても採用されている。

オープン以来、週末には県内外からたくさんの来客がある。「『スキー場で来て以来だよ』という方もいて、うれしいですね」とほほえむ。長岡市内でも農業体験ができるカフェを開くなど、精力的に活動。「地元農家さんの野菜の魅力や、山本山の自然の素晴らしさを知ってもらいたい。カフェがきっかけになれたらいい」と力を込める。「いつかはキッチンカーもやってみたい。日本を一周するのも面白いかも」と笑顔がはじけた。


橋本実樹さん
【プロフィール】
はしもと・みき 1993年、東京都出身。2018年、地域おこし協力隊として小千谷市に赴任。2021年に「やまもとやまCAFE 本」をオープン。山本山高原の豊かな自然や地元野菜の魅力を伝えている。