研修生カンパニーからキャリアを開始
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館を拠点にグローバルに活動する専属舞踊団「Noism Company Niigata(ノイズムカンパニーニイガタ)」。浅海侑加さん(31)は研修生カンパニー「Noism2」のリハーサル監督を務める。花が咲いたようなかれんなたたずまいは、舞台上での研ぎ澄まされた立ち姿からは大きくかけ離れた印象だ。
愛媛県出身。3歳でクラシックバレエを始め、18歳で渡英、バレエとコンテンポラリーダンスを学んだ。Noismへの加入は、留学中に同期の日本人留学生が持っていたDVDがきっかけ。プロになるかも決めていなかったが「これだ」と直感、オーディションを受け、2013年に21歳でNoism2に加わった。
3年後にプロフェッショナルカンパニー「Noism1」に昇格するも、がむしゃらに踊りに向き合ううちに迷いが生じたという。一時退団し飲食店でアルバイトをしたり、大学ダンス部のコーチをしたりした。外から見つめる1年を経て、あらためてその存在の大きさに気付いた。20年にNoism2リハーサル監督に就任、以降はプロを目指す若い研修生を指導する。
研修生には、イメージをどう伝えるかに心を砕く。「踊りの感覚的な部分を伝える難しさがある。感覚や筋力が違えばまったく違うものになる」。一人一人に合わせて言葉を選び、やって見せ、時にはアニメーションやにおいを例に伝える。他競技のコーチング本も参考にし、工夫を重ねる。
子どもたちに贈るポジティブなメッセージ
今秋行われる「新潟県文化祭2024」では、若い世代に文化・芸術に触れてもらうことを目的とした事業「こども文化芸術体験ステージ」にNoism2が出演する。
演目の一つは芸術総監督の金森穣さんがストラヴィンスキーの名曲に振り付けた「火の鳥」。自分の殻に閉じこもった少年が火の鳥と出会い、導かれていく。「火の鳥は強いパワーの象徴。見ると生きる力が湧いてくるような作品。ポジティブなエネルギーがみなぎってくる」と浅海さんは力を込める。
鑑賞する子どもたちには、「難しく考えないで、見たものをそのまま感じてほしい。舞踊でしか感じられないものがあると思っている」と強調する。
趣味はパンやお菓子を作ること。食事はなるべく手作りをこころがけ、体調維持に努める。「食品添加物を取らないようにしている。ラクトアイスやポテトチップスは食べません」ときっぱり。
Noism1の一員としても舞台に立ってきたが、ことし7月の公演を最後にリハーサル監督に専念する。「今シーズンの研修生は20代前半の9人。みんな県外から来て一人暮らしをしている子たち。頼ってもらいたいし、しっかりと向き合いたい」と話す。自身の経験から「目指していることを見失ってほしくない。Noism2にいたことを、少しでも意味のある時間にしてほしい」と研修生を見守るまなざしは温かい。
まだまだ踊りたい思いはある。舞踊家としての将来を問うと、小首を傾け「踊れって言われたら、出るかもしれない」とほほ笑んだ。
浅海侑加さん
【プロフィール】
あさうみ・ゆか 1992年、愛媛県出身。3歳よりクラシックバレエを始め、2010年、イギリスRambert School of Ballet and Contemporary Danceに留学。13年よりNoism2。Noism1準メンバーを経て、Noism1正式メンバーに昇格。20年よりNoism2リハーサル監督。
■「新潟県文化祭2024」こども文化芸術体験ステージ
https://n-story.jp/bunkasai/child/
日時 2024年11月23日(土・祝)
第1部 開場/10:15 開演/11:00~12:00(予定)
第2部 開場/13:15 開演/14:00~15:00(予定)
会場 越後妻有文化ホール「段十ろう」(十日町市本町一丁目上508番地2)〔地図〕