「深まる秋、土物と迎える冬」
気象庁の定義では11月は秋だそう。
暦の上では11月7日の立冬を境に冬。
近年夏の暑さがずるずると続いて、秋を愉しめる期間が短いような気がする。
気づけば重ね着が必要な肌寒さ。
心がぎゅっとなる。
元来冬は苦手だけれど、衣替えと同じように季節や気持ちに寄り添った器や工夫で、これからやってくる本格的な寒さを少しでも楽しさに変えたいところ。
暑さ厳しい時期は食卓に「目から涼」を意識するように、これからの季節は「目から暖」。
夏場に活躍したガラスやかごはしまい込み、今の気分に合うのはざらっとした質感や厚みのある土もの、耐熱のうつわや、木のぬくもりを感じられるようなうつわたち。
温かな光を灯すランプや、テーブルクロスなどの布小物を食卓に加えるのも温かみが一段上がる技。
寒さが厳しくなると心の温度も寒さに引っ張られそうになるけれど、わずかな時間でもキャンドルを灯して暖かな炎を見つめたり、粉引のたっぷりとしたマグカップでふぅふぅと熱々のチャイをすすったり、砥部焼の大鉢に冬野菜の煮物をどっさり盛り付けたり。
幸せになれる心地良い工夫をして冬と仲良く暮らそう。
この季節、特に重宝するのは耐熱のうつわ。
料理をしてそのまま食卓へ出すこともできて、見た目にも優秀。
小さな耐熱器でひとりずつ、中身は湯豆腐で十分。熱々の湯気が嬉しく食卓に映える。
大きい耐熱皿はそのままだるまストーブにかけて、部屋を温めながら調理もできる一石二鳥。
土鍋や土瓶も大活躍する季節。土鍋をストーブの上にほったらかしてつくる焼き芋は格別。
蕎麦の実をことこと煮て、蕎麦がゆをつくる眺めは幸せしかない。
器も衣替えをして、温かい景色を家の中に作り出し、身体も心も温かく過ごそう。
湯気が幸せな季節のはじまり。
【プロフィール】
高橋香織さん
千葉県出身。スウェーデン等、海外経験も長く、日本の魅力を再認識。食を愉しむ暮らしをインスタグラムで発信している。産まれたての雛の雌雄を判別する初生雛鑑別師の資格を持ち、全日本初生雛雌雄鑑別選手権大会で2度優勝している。新潟県見附市在住。