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2025.06.09 special

欧州各地でジャズフェス続々 音楽を愛し人生を楽しむ人々

シリーズ

TOKUのMUSIC LIFE

皆さん、いかがお過ごしですか?

今回で3回目になるTOKU の「assh」コラムです。

今年もだんだんと夏が近くなってきましたね。

夏といえば野外フェスティバルの時期。 

自然の中で飲食を楽しみながら生の演奏を聞く、演者にとっても特別な時間です。
ミュージシャン達が集まるということで、古い友人との再会や新しい出会いもたくさん。これもまた演者にとってのフェスティバルの大いなる楽しみのひとつです。


世界中にあるジャズ・フェスティバルですが、

ヨーロッパには特に多いのです。  

今回はそんな音楽フェスティバルを紹介してみましょう。

 

まずは、スイスのモントルー・ジャズ・フェスティバル。7月に、レマン湖のほとりで2週間にわたって行われ、世界中から著名なアーティストが集まるフェスティバルです。ジャンルもブルース、ロック、ソウル、ポップ、とさまざま。僕としてはジャズを始めるきっかけのひとつでもある、生涯リスペクトするであろうMiles Davis が、90年代始め、死の直前にQuincy Jones と長い時を経て再共演するという舞台がありました。これは映像に収められています。そこでドラマーとして参加しているのが僕のファースト・アルバムでドラムを演奏してくれたGrady Tate。ボーカリストとしてもすごい人です。

他にも名演奏はたくさんあり、ライヴアルバムとして残っているものも多数あります。
   

モントルー・ジャズ・フェスティバル(スイス)


僕が置くもうひとつの拠点、フランス・パリ。フランスで1番大きいフェスティバルといえば 1978年に始まった「Jazz In Marciac(マルシアック)
」 でしょうか。スペインに近い南の町Marciac で行われ、やはり世界中からアーティストがやってきます。このフェスティバルも2週間ほど開催されます。2週間毎日コンサートがあるってすごいですよね!パリの街中、とくにメトロの駅構内に宣伝用の大きなポスターが貼ってあったりして、それを見るたびに楽しそうだなあ、いつか行きたいなーと思いを巡らせてます。。

いつか行くぞ!

 

フランスには他にもたくさんのフェスティバルがあります。初めて僕が出演したことのあるフェスはパリのジャズ・フェスティバルで、その名も「Paris Jazz Festival」。パリ花公園という広い公園の中にステージが造られ、79月の毎週末に1000人を超える人が集まります。

僕は2007年にこのフェスティバルに出演しました。Philip Catherine というギタリストと Bart De Nolf というベーシストと3人での出演で、2人ともベルギーのブリュッセルに住むミュージシャンです。ギタリストのフィリップは生前の Chet Baker とたくさん共演した人ということもあり、Chet Baker トリビュートというコンセプトでスタンダードをたくさん演奏しました。

ちょうど前の週に友人の Richard Bona というベーシストが自身のバンドで出演していて会いに行ったのを覚えています。彼はカメルーン出身でパリに住んでいたこともありフランス語はペラペラ、それまで彼とは英語で話していたのでフランス語で聴衆を笑わせていたのを見てすごいなあと感心したものです。

パリ・ジャズ・フェスティバル(フランス)

 

次に紹介するのは、フランス北西部の街・ノルマンディ地方Saint Malo(サン・マロ)で開催されるSaint Malo Jazz à l’étsge(サン・マロ・ジャズ・ア・レタージュ)」。3日間にわたり、街中の様々な会場でアーティストが熱い演奏を繰り広げます。サン・マロは港町で、その昔はとても栄えていたところだと聞きました。今でも遠洋漁業はさかんに行われており、街には船の形をしたレストランなどもあります。またサン・マロはガレット発祥の地でもあり、美味しいガレット屋さんがいっぱい!昼間はたくさんの観光客で賑わいます。滞在中は毎食がガレットとクレープでした(笑)。

古い街で、会場のひとつであるホールは歴史ある内装、音も格別でした。優秀な音響チームも揃っていて、集まるお客様たちもワクワクしながら音楽や観光を楽しんでいました。

「モン・サン・ミシェル」が近くにあり、フェスティバル最終日の次の日にプロデューサーがミュージシャンを連れて行ってくれました。テレビでしか見たことがなかった世界遺産を訪れることができてそれはそれは感動でした。

 

多くの観客と盛り上がるステージ


もうひとつ、Nancy(ナンシー) という街で開催される
Nancy Jazz Pulsations Festival」 。

1973年に始まったこのフェスティバルは、パリからTGVという高速列車で約1時間半くらい東に行った街のイベントで毎年秋に10日間開催されます。会場がいくつかあり、フランスのミュージシャンを中心に海外からもミュージシャンがやってきて賑わいます。僕が演奏した会場は大きなホールで、平日の夜でしたがたくさんの人で席が埋め尽くされ、素朴な街の皆さんがじっくりと演奏を楽しんでおられました。

フランスの高速鉄道TGV

世界遺産にも登録されている、ナンシーのスタニスラフ広場


こうやって海外のジャズ・フェスティバルに参加することができて感じることは、皆さんゆったりと人生を楽しんでいるなあということ。

音楽だけでなく、様々な形での人とのコミュニケーションを楽しんでいるように思えます。

何事も人との繋がりから始まるということを改めて感じさせてくれるような、そんな時間をヨーロッパのフェスティバルで楽しんでいます。

僕は今年も国内外いくつかのフェスティバルに出演する予定です。

国内では、2010年の第2回から毎年出演するNakasu Jazz」。国内有数の繁華街のひとつ、福岡の中洲エリアの中に屋外ステージがいくつも設けられ、エリア全体がライヴハウスと化します。年々集まる人が増え、今では入場制限がかかるほど。

他にも富山県魚津市の「UOJAZZ」、鹿児島市の「かごジャズ」といったフェスティバルに出演する予定です。

ローマを代表する古代遺跡・コロッセオを前に


海外では、イタリア・ローマの「Jazz & Imageというフェスティバルに出演予定。2023年から連続3回目になります。このフェスティバルの魅力は、有名な歴史的建造物コロッセオという世界遺産が目の前にある野外ステージで演奏するということ。初めて会場を見た時には「本当にここで演奏するの!?」とびっくりして感動しました。世界遺産から飛んでくる歴史のパワーを感じながらプレイするレアな状況は他にはない高揚感を味わえます。料理も最高に美味しい、さすがイタリアです。

ライトアップされた夜のコロッセオ


最後にエピソードをひとつ。

先に書いた、2007年パリで出演したジャズ・フェスティバルの終演後のこと。

楽屋エリアに1人の老紳士が尋ねてきました。

とても身なりの良い、スーツにハットといういでたちのこの方が僕に言ったことです。 

その日、1曲だけですが、「Stardust」というスタンダード曲を日本語で歌ったのです。僕にいろんなことを教えてくれた尊敬するピアニストの山本剛さんが弾き語りのアルバムを作っていて、そのアルバムで剛さんが歌っている歌詞を拝借して歌いました。

その紳士は目をうるうるさせながら、

「今日、僕にとって1番嬉しいのは、僕にとって新しいバージョンのStardust を知ることができたことです、ありがとう!」

と言ってくれたのです。 

こんなことを言われたことのない僕はとても感動して、精一杯の「ありがとう」を返しました。

本当に音楽を愛し、音楽とともに人生を歩むことを楽しんでいる方なんだなと嬉しく、ありがたい気持ちになりました。

一生忘れられないエピソードです。

 

では、また来月に!

 

TOKU