
アウトドアの達人が、自然豊かな新潟県の楽しみ方を紹介するリレーコラム。今月はWEST新潟店店長の加藤俊さんが、フライフィッシングの楽しみ方をレクチャーします。
主にヤマメやイワナといった山間部の小渓流にすむ魚を対象とし、水生昆虫などを模したフライ(毛バリ)を使って釣るのがフライフィッシングです。古くからヨーロッパで楽しまれていた釣りですが、日本にはイギリス貴族の文化と共に伝わったせいか、「紳士の遊び」のイメージもあります。今回はそんな少し敷居が高くて難しそうな、フライフィッシングの楽しみ方をご紹介していきます。
基本的には、日頃、魚たちが食べている川虫や川の周辺にいる昆虫に似せた毛バリを本物の虫と同じように水面を流して釣ります。こう聞くと、途方もなく難しいことのように感じるかもしれませんが、ご心配なく。他の釣りと同じように、よく釣れるパターン(毛バリの形や大きさ)は大体決まっていて、深く考えなくても定番の物で十分に魚を釣ることができます。
他の釣り方を見ても、魚が見たこともないルアーで釣れたり、その川にいないはずの芋虫やイクラの餌で釣れるのと同じで、フライもそれほど虫にそっくりでなくても、魚達は虫っぽい雰囲気だけで本能的に興味をもってフライを食べてしまいます。
フライフィッシングに必要な道具
これから渓流でのフライフィッシングを始める方にはロッド(竿)、リール、フライライン、リーダー類(ハリス、仕掛け)、フライがまとめて入ったスターターセットをおすすめします。
その他の必需品は
・ウェーダー(胴長靴)
・ウェーディングシューズ
・ネット(網)
・フロータント(フライを浮かせるための溶剤)
・フォーセップ(針外し)
・道具をまとめて入れるベスト or ショルダーポーチ
・偏光サングラス 等々…
他にも、人里を離れた釣り場に出かける場合は、登山用品などと同じく下記のような安全確保のための道具も用意してください。
・熊よけスプレー
・ホイッスル
・地形図、スマホの地図アプリ
一概に渓流で釣るといっても、「いつどこでやればいいの」と最初は戸惑う方が多くいらっしゃいます。
適当に近所の川を選んでも魚がいるとは限らないし、近場の渓流と甘く見ていると意外な危険が潜んでいることも!
そういった初心者の方によくおススメしているフィールドが三条市下田郷にある【吉ヶ平フィッシングパーク】です。
守門川の上流域、約1㎞間で定期的にイワナやヤマメの放流を行っているので、魚影が濃い釣り場です。釣りをする区間は自然の地形そのままで、本格的なフライフィッシングを始めるには最適です。一般的な釣り場との違いは、釣れた魚はキャッチ&リリースをするルールがあり、常に魚のすむ環境が守られています。
管理する「吉ヶ平自然体感の郷」係員の方に、釣りについて聞くことができるのもメリットです。
注意:あくまでも自然の渓流なので一般渓流と同じく雨による増水等の危険回避は自己責任となっています。初めての方は係員のアドバイスをよく聞き、ルールを守って安全に釣りを楽しんでください。
新潟で楽しめるいろいろなフライフィッシング
ここまでは一般的に普及しているポピュラーなフライフィッシングのご案内をしてきましたが、フライフィッシングは渓流のヤマメやイワナだけでなく、多様な魚種やフィールドで楽しむことができます。特に新潟県は大物の宝庫といえるかもしれません?
【奥只見銀山湖の大イワナ】
日本で最も大きなダムの一つであり、ダム完成当時は東洋一の人造湖と呼ばれていました。
このダムを取り囲む豊かな自然林が生む栄養が、昆虫類やワカサギなどの魚を育て、それらを食べて大型化したイワナはフライフィッシャーに限らず、全国のトラウトアングラーの憧れになっています。
【三条市五十嵐川のサーモンフィッシング】
フライフィッシングで鮭を釣ると聞くと意外に思うかもしれませんが、本場イギリスではこちらの方がポピュラーなほどです。渓流で使うロッドでは太刀打ちできないので、それ専用のパワーのある道具が必要になりますが、最も伝統的なフライフィッシングともいえる釣りが楽しめます。日本国内での鮭釣りは法律により全面的に禁止されていますが、五十嵐川は有効利用調査として鮭釣りが出来る、貴重な釣り場です!
【海でも釣れるフィッシング】
新潟県で釣りといえば、全国的には海釣りの方が有名なので当然ともいえますが、もちろんフライフィッシングでもさまざまな魚種を釣ることができます。
佐渡島では70cmを超えるシーバスや、海草の際を好んで生息する根魚のコチなども釣れているとか。
その他、魚野川本流の雪代イワナや荒川、三面川のサクラマスなど、全国から腕利きの釣り師が集う有名河川もフライフィッシングの対象になります。
フライフィッシングについて人におススメすると「なんか聞いたことはあるけど、あの難しいやつだよね」ってよく言われます(笑)糸の結び方やフライの選び方、キャスティング(投げ方:今回は触れていませんが、これが一番難しい!)など独自な技術が必要で、確かに他の釣りに比べれば難しいかもしれません。
ですがこれを釣りではなく他のスポーツと比べてみてはどうでしょう? 例えばゴルフを始めて、自己流だけで「楽しめるレベル」に達する方はどれだけいるのか。サッカーや野球も同じはず。経験者や指導のプロの講習を受けるのは一般的なことかと思います。
フライフィッシングをこれから始める方には、少しプロセスが必要になるかもしれませんが、「たかが釣り」と侮らず、専門店で意見を聞いたり専門書を読んだりして取り組む必要があるかと思います。
とまあ、いろいろ難しいお話が多くて聞いてるだけで敬遠される方も多い遊びですが、魅力はズバリ「下手でも釣れる!」「うまくいかなくても、なんか楽しい世界」。これだけはお約束できます!
あまり構えずに、お気軽に始めてみてください。お店でお待ちしています。
※これまでご紹介した内水面(渓流釣り・本流釣り)では遊漁券と呼ばれる釣券の購入が必要です。
これは川を管理している各河川の漁業協同組合に支払われ漁業資源を守りながら釣りを楽しむために使われます。
【プロフィール】
WEST新潟店 店長 加藤俊さん
新潟県加茂市出身。15歳頃から釣りに夢中になり、フライフィッシング歴は30年。InstagramやYouTubeチャンネル「WESTアウトドアTV」でもフライフィッシングの魅力を伝えている。