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2025.12.17 activity

野鳥を眺めて心豊かに 双眼鏡の先に広がる世界

アウトドアの達人が、自然豊かな新潟県の楽しみ方を紹介するリレーコラム。今月は三条市グリーンスポーツセンターの鳥羽和明さんが、バードウォッチングの魅力と楽しみ方をレクチャーします。


「バードウォッチング」という言葉を聞いたことはありませんか?
一般的には、自然の中で「野鳥観察」を楽しむ活動を指します。近くの公園やちょっとした山の中、海の近くなど、野鳥の声が聞こえてくるような場所であれば、どこでもバードウォッチングができます。それも手ぶらでOK! 特別な知識や道具がなくても、気軽に楽しむことができるのです。
ここでは、三条市街地から車でわずか15分ほどで行ける大崎山公園でのバードウォッチングについてご紹介させていただきます。

冬にどのへんでどんな野鳥が見られるかを記したマップ。三条市グリーンスポーツセンター窓口で配布もしています

野鳥がいる場所ならどこでも楽しめるバードウォッチングですが、人があまりいない山の中の方が珍しい鳥もいるかもしれません。ですが、山歩き同様、慣れない場所にいきなり一人で行くのはそれなりのリスクがあります。経験が少ない方は、ぜひ遊歩道などが整備された公園から始めてみてはいかがでしょうか。

実際に行ってみるとわかりますが、駐車場や、いつでも利用できるトイレがあるかなども、重要なポイントです。むやみに山へ行くと、駐車場がない場合や、実は私有地だった、なんていうことも。その点、大崎山公園は駐車場やトイレもあり、多少のアップダウンもあるので健康維持もでき、一石二鳥で楽しむことができます。

葉が落ちた秋から冬、早春がおすすめ

野鳥は四季を通して見ることができますが、初心者におすすめなのは、葉が落ちて鳥の姿が見やすいこれからの季節です。寒いので防寒対策はしっかりと! 蚊などの虫もいないし、とってもおすすめです。

野鳥は、寒かろうが雨が降ろうが、それこそ雪が降ろうが、毎日餌を採り、活動をしています。朝だけでなく、日中も観察することができます。日が差すほど晴れているよりも、曇った日の方がにぎやかかもしれません。

オレンジ色の羽がかわいらしいヤマガラ

大崎山公園では、車が通る道路沿いから、「スポーツの森」という公園の中まで、いたるところで野鳥の姿を見ることができます。秋から早春にかけては、ヤマガラやシジュウカラ、エナガやコゲラなど、留鳥(りゅうちょう)と言われる一年を通してこの辺で活動している鳥の姿を見られるほか、冬になるとやってくる人気のルリビタキやジョウビタキなど、里山でよく見かける野鳥の数々を観察することができます。運が良ければ私たちから45メートルほどの距離まで寄ってくることも! こちらの気配を少なくして、ゆっくりと歩いてみてください。

冬になるとやってくるジョウビタキ(左)とルリビタキ

双眼鏡一つで世界が変わる!

手ぶらでも楽しめるバードウォッチングですが、おすすめアイテムをひとつ挙げるとしたら、「双眼鏡」です。バードウォッチング初心者におすすめなのは、8倍や10倍の倍率の双眼鏡なのですが、これがあるだけで、野鳥の姿や表情がよく見えるようになります。大げさですが、感動します! もちろん肉眼の観察でも充分楽しいのですが、双眼鏡があるとさらに良いです。12時間の森の散策があっという間に感じられるようになります。

双眼鏡は1万円以下のものも多数売られていますが、2万円くらいするものを選ぶと、とてもクリアに見えるし、多少薄暗くても明るく見えるようになります。中には10万円を超えるものもありますので、予算に応じて選ぶとよいと思います。

三条市グリーンスポーツセンターでレンタル可能な双眼鏡(8×30)

買うのはさすがに・・・という方には、大崎山公園に隣接している三条市グリーンスポーツセンターで倍率8倍の双眼鏡を無料で貸し出していますので、窓口にお声がけください。また、3月からは野鳥観察会も開催しますので、もっと野鳥のことを知りたい!という方は、そちらにご参加いただくのも楽しいかと思います。

今回紹介している野鳥のほとんどはとても小さく、体の大きさ(くちばしから尾羽の先まで)はわずか15センチほど。長い尾羽を除くと、人間の握りこぶしよりも小さいくらいです。そんな小さな生き物が、大きな鳴き声で仲間たちとコミュニケーションをとり、一緒に行動しています。鳥の種類によっては、冬場は単独で縄張りをもって生活する種もいます。

そんな小さな鳥を発見して双眼鏡で表情が見えた時には、本当に嬉しく感じると思います。かわいいしかっこよくも見えるかもしれません。小さな体でよく頑張っているなあと、感心してしまうことも。バードウォッチングを通して、里山の自然の中で頑張って生きている生き物たちに少しでも関心を持ってもらえたらうれしいです。

冬を大崎山公園で過ごした野鳥の一部の種は、夏にかけて大崎山公園を離れていきます。それと逆に、この時期に大崎山公園にやってくる夏鳥たちもいます。大崎山公園の夏鳥の象徴と言えば「キビタキ」。その美しいさえずり声は、新緑の森に大きく響き渡り、私たちを魅了します。キビタキは鳴き声で居場所を知ることができ、観察しやすい鳥の1種です。4月下旬に渡ってきてすぐにさえずり始め、6月いっぱいは一日中さえずっています。

大崎山公園で夏に見られるキビタキ

私が大崎山公園でバードウォッチングを始めて丸5年。その間、60種を超える野鳥と出会ってきました。5年前も今も、出会える種や数に大きな差はないと感じています。できればこれから先も、小さな野鳥たちにとって安心して過ごすことができる自然環境を残していきたいと願っています。鳥が生きていくためには多様な樹木が必要で、餌になる虫や木の実、身を隠すことができる藪も必要です。それらがバランスよく存在しているからこそ、野鳥たちがこれだけの数生息しているのだと思います。

そんな野鳥の生活の一部をちょっとだけ観察させてもらうことで、私たちの心を豊かにしてくれます。つまり、自然が豊かであることが、私たち人間の心を豊かにするのだなあと思わせられます。バードウォッチングの楽しさにはまり、そんなことを学ばせていただきました。


【プロフィール】
三条市グリーンスポーツセンター
センター長 鳥羽和明さん

指定管理者として20114月より三条市グリーンスポーツセンター(新潟県三条市)のセンター長を務め、現在15年目。隣接する大崎山公園とあわせて一体で維持管理業務にあたっている。自然が大好きで、仕事が休みの日も大崎山公園に来ているほど。5年前に購入した超望遠コンデジで野鳥観察にはまり、今では三条市グリーンスポーツセンター主催で野鳥観察会も開催しガイドを務める。

三条市グリーンスポーツセンター
住所|新潟県三条市柳沢1572
電話0256-38-3968(月曜日、12/291/3休館)