開湯1200年 豊かな自然の恵み守り継ぐ
新潟県阿賀野市と阿賀町にまたがる五頭山の麓に位置する五頭温泉郷の一つ、今板温泉(阿賀野市)。国道290号線を曲がり、杉並木を進むと現れる、山裾の木立に囲まれるように立つ一軒宿で湯本舘の若女将、永松祥子さん(41)がにこやかに出迎えてくれた。
開湯1200年と伝わる五頭温泉郷は、豊かな自然と効能高い天然ラジウム温泉で知られる。出湯、今板、村杉の三つの温泉地があり、湯本舘は現在、今板温泉で唯一の温泉旅館だ。

創業は、新津-新発田駅間の鉄路が開業するなど、交通の便がよくなった大正元年。名物の鯉料理のほか、山の傾斜を生かして造った庭は、創業時から変わらない景色だという。「山の自然を大切に、とは父からずっと言われてきたこと」と振り返る。
先代主人の長女として生まれた永松さんは、首都圏の外国語大学を卒業後、静岡県内の温泉旅館や一般企業に就職。2010年、千葉県出身の夫、健太郎さんとの結婚を機に帰郷し、家業に入った。
まず取り組んだのは従業員の職場環境を整えること。「昔ながらの旅館は拘束時間が長いことが多く、そのままでは厳しいと感じていた。細かいシフト制に変えて、有給も取りやすいようにして。ホワイト企業を目指してます」とほほ笑む。
相撲好きとしても知られ、「相撲女子(スー女)」として取材を受けることもたびたび。地方巡業の楽しみ方をつづったブログが反響を呼び、記事を参考に巡業を楽しんだ県内外の相撲ファンが泊まりに訪れるなど、交流を楽しむ。
今の「推し」は明生関と平戸海関。「どちらも小さめの力士なんですけど、体の大きい相手に真っ正面からぶつかっていく姿勢が好きで、今推してます」と、ロビーに飾っている、2人をかたどったアクリルスタンドを手ににっこり。

サッカー観戦にも夢中で、アルビレックス新潟が大好き。時間の許す限り応援に駆けつけ、時には選手一家が温泉に入りに訪れることも。「アルビが好き、相撲が好きって言ってたら、いつの間にか来てくれるようになったというか。ありがたいですよね」。
ロビーの本棚や売店には、永松さんの熱意が伝わる手書きのポップが並ぶ。長年書き続けているブログにも、人柄を表すような親しみやすく軽やかな文章がつづられる。「旅館というとちょっと格式張った印象があるかもしれないんですが、全然そんなことないんですよって、ハードルをグッと下げたのはあるかもしれない」と笑う。
今後の目標は、五頭温泉郷の知名度をもっと上げること。五頭温泉郷の10軒の旅館とは、女将同士で連携し、情報共有する。「たくさんの方に五頭温泉郷の恵みをお届けできるように、今後も発信していきたい」と晴れやかに語った。
永松祥子さん
【プロフィール】
ながまつ・しょうこ 新潟県阿賀野市出身。大正元年創業「五頭今板温泉 湯本舘」若女将。大学卒業後、温泉旅館や一般企業勤務を経て家業へ。親しみやすい笑顔と温かなおもてなしで五頭温泉郷の魅力を多くの人に届けている。




