河港で栄えた歴史あるまち 古民家にひらくみんなの居場所
かつて阿賀野川の舟運と街道をつなぐ物流の要衝として栄えた新潟県阿賀町津川地域。糀店や酒蔵、漬物店が立ち並ぶ通りを行くと、古き良き時代に紛れ込んだような気持ちになる。

ヨリミチハウスは、そんなまちの一角にある「寄り道できる家」。地域おこし協力隊として赴任した坂井千晃さん(28)ら3人が、任期満了後も町に残って2024年、法人を立ち上げた。過疎化が進むまちで、おのおの本業の傍ら、築100年を超す古民家を拠点に駄菓子店を営んだりイベントを企画したりと、誰もが立ち寄れる地域の居場所を設けている。
イベントは、遺跡が多数存在する阿賀町らしく、識者を招いて縄文に関するトークセッションを開いたり、みんなで陶芸やボードゲームを楽しんだり。「趣味や個人の活動で終わらせずに、高校生たちも巻き込んで、人とのつながりへと広がるような場をつくりたい」と坂井さんは話す。

現在、中学校の美術講師や学習支援員などを務める坂井さんは、岡山県内の高校を卒業後、かねて興味のあったデザインを学ぶため、英ロンドン大学に進学。ボランティアとして美術館の子ども向けアート教育イベントに携わったことから教育にも関心を持ち、帰国後は移住サイトで見つけた阿賀町の公営塾で高校生の学習支援員を務めた。
地域の印象について、「好みは分かれるかもしれませんが、私は阿賀町に残る古き良き生き方や価値観が好き。せかせか働くのは自分には合わないから、このまちのゆったりした時間感覚や、世話焼きなじいちゃんばあちゃんとの関係性が肌に合っているなって思います」とほほ笑む。
一方で、学校教育の一環で地域の大人と子どもが一緒にプロジェクトに取り組む機会があるなど、小規模地域ならではの可能性も感じている。「分野の違う人と関わって、高校生と一緒に挑戦したり失敗したり。大人にとっても学びがある」
教育に関わる中で、子どもたちにとっての学びの場は学校だけではないと実感した。ヨリミチハウスの活動は、学校外でのびのびと学べる場づくりという側面もある。
現在は、新たに空き家を活用し、物々交換所やサロン、シェアハウスなどを備えた拠点「とんぼのはじまり」を展開。地域内に小さな拠点を増やし、人の循環と交流を生み出すことを目指している。
目標は、大人も子どもも関係なく、誰もが自然に集い「遊ぶ」ことができる地域社会をつくること。「『寄り道』は遊び。これからもみんなで遊べたらいいなと思います」とにこやかに語った。
坂井千晃さん
【プロフィール】
さかい・ちあき 岡山県出身。ロンドン大学デザイン学部卒。阿賀町で地域おこし協力隊員として高校魅力化に携わった後、2024年に一般社団法人ヨリミチ設立。中高生や地域住民が寄り道できる家を通して、地域ににぎわいを生み出している。





