女性初の店長就任「後輩たちのロールモデルに」
ことし開店40周年を迎えた新潟伊勢丹。「こころが向かう場をつくる。」のキャッチコピーの下、記念事業を展開している。店長として店頭のスタッフを束ねる加藤温子さん(53)は「新潟伊勢丹の成長と共に仕事をし、節目の年を店長として迎えられたのは本当にうれしいこと。学生時代の自分に声をかけたいくらい」と笑顔を見せる。
新潟市出身。学生の頃から家族で利用していた新潟伊勢丹が大好きで、1990年に入社した。都会に憧れた学生時代、東京と同じ商品が同時進行で並ぶ百貨店に魅了された。「すごくキラキラして見えた。自分が好きな物を皆さんに広めたい、今でいうと『推し活』かな。そういう気持ちで入社して、仕事をしてきたように思います」と快活に話す。
スポーツ用品の販売部門からキャリアを積み、昨年女性初の店長に就任した。就任以来、自由闊達(かったつ)な社風がさらに加速したと感じる。マネージャーを目指す女性社員も増えた。「各フロアの責任者は、紳士服売り場以外は全員女性。後輩たちのロールモデルとなれたのではないか」と話す。
開店と同時に売り場を回る。地下1階から7階までのフロアや近隣ビル内の店舗を巡り、売り場の一人一人と対話。変わったことや困ったこと、顧客とのエピソードなどに耳を傾ける。「店長は顧客接点をつくる場の責任者。現場の変化を見逃さず、一つ一つの点を拾って面にしていくことが仕事だと思っている」。
「モノ」から「コト」へ 時代に合わせしなやかに変化
時代の変化に合わせ、売り場も変革。2019年からは、百貨店の一等地とされるエスカレーター脇に1階では飲食スペースを設け、あえてくつろげる場に。2~5階では専門知識を持つスタッフを配置し、肌色や骨格に合わせて似合う装いを提案したり、暮らしやギフトの相談に応じたりと、「モノではなくコト」の提供に力を入れる。「お買い物の空気感やコミュニケーションはリアルでないと味わえない。いかにワクワクする時間を提供できるかは、やはり人の力なのかなと思う」と力を込める。
趣味は読書。本を通じて他者の思考に触れ、新たな発見を得る。毎朝4時に起き、ストレッチで体をほぐすのが日課。「最高のパフォーマンスをするには健康でいないと。プライベートの話をしていたのに、つい仕事の話になってしまう」とはにかむ。
今後について、「40周年は通過点。100年先まで続く企業になるために、どう変化していけるかを考えている。地域の皆さまと一緒に新潟全体を活性化していきたいと思っています」と力強く語った。
加藤温子さん
【プロフィール】
かとう・あつこ 1971年、新潟市出身。90年に新潟伊勢丹に入社。販売部門からスタートし、マネージャー、部長職を経て2023年4月から現職。