
ただ歩いているだけなのに、素敵な人がいます。それは「歩く」というシンプルな動作の中に、美しい立ち姿をはじめ、あらゆる方向への意識やバランスが含まれているから。身体の状態や意識を、見透かしてしまう歩き姿。美しさを身体に刻み込むメソッドを紹介しましょう。
教えてくれた人 井関 佐和子さん
舞踊家。Noism Company Niigata国際活動部門芸術監督。1978年高知県生まれ。16歳で渡欧。NDTⅡ(オランダ)、クルベルグ・バレエ(スウェーデン)を経て2004年Noismの結成メンバーに。
第38回ニムラ舞踊賞、令和2年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞。
▪️Basic(基本のつくりかた)
きれいに歩くための基本姿勢
きれいに歩くには、まず身体の前面より背面を意識することです。立ち姿と同じく上下に引っ張られているような感覚を持ち、後ろから人に押されているように前へ進みましょう。「きれいに」と意識すると胸を張りがちですが、体が反ってしまって足も前に出しにくくなり、あまり美しくありません。背骨は真っ直ぐに、後ろから押されるように足をスッと前に出すのがポイントです。
1:身体の背面に意識を向け、上下に引っ張られているような感覚を持って立つ。
2:後ろから人に押されているような気持ちで足を前に出す。
▪️ポイント
手を使って「後ろから押される」意識に
自分の手で後頭部を押さえ、手で身体を前に押し出すように歩くと、押される感じが意識しやすい。
後頭部の下を手のひらで包むように。
▪️warm-up (レッスンの前に)
まず、足を「ほぐす」
歩く前に足首をほぐすと、足の可動域が広がり、かかとからしっかり地面を踏めるようになります。すべての動きの準備やケガ予防にもなるので、日常生活に取り入れてみましょう。私もレッスン前には必ずしています。
1:足首を回して
手の指を足指の間に入れ、足首を回す。指と指は握手をするように組んで(写真下)行いましょう。足首の可動域が広がります。
2:足首を刺激して
足首の空洞に指をぎゅっと差し込み(写真上)、そのままゆっくりと膝を前に倒す(写真下)。足首が伸びやすくなり、歩く時、かかとにしっかり乗れるようになります。
▪️Lesson(「きれい」のつくりかた)
太ももを刺激し、バランスを整えよう
きれいに歩くには、太ももの前後のバランスが大切です。ハムストリング(太ももの裏側)の下部を刺激する動作(1)と、太ももの前側と後ろ側両方に効く動作(2)で、太ももの筋肉にアプローチしましょう。歩く前に行うと足が前に出やすくなり、美しい歩き方につながります。
(その1) ハムストリング下部を刺激
ハムストリングに刺激を与えるだけでなく体幹も強くなるメソッドです。
1:仰向けに寝てひざを立て、お尻を持ち上げて「ハーフブリッジ」の姿勢を取ります。腰、ひざ、かかとが一直線になること。
2:右足を少し前に、続けて左足を少し前に進めます。
3:さらに両足を片足ずつ、前に進めます。
(その2) 太ももの前と後ろを刺激
前ももだけでなくハムストリングにも効きます。
ストレッチポールに両足を乗せ、胸裏から浮かせる。このとき膝を伸ばしすぎないで少し緩めること。1分間続ける。
<health column もっと美しく、もっと健康に>
マッサージはマグネシウムオイルで
「マグネシウムは筋肉を緩める」「不足すると痙攣(けいれん)が起こりやすくなる」と知って以来「何とかしてマグネシウムを身体に入れたい」と思いたどり着いたのがこのオイルです。マグネシウムは肌から摂取できるそうで、欧米では入浴剤としても使われてきたとか。皮膚にすり込んでいると、筋肉がやわらかくなるのが分かります。やわらかな筋肉は、とても重要。やわらかければやわらかいほど、使う時にグッと力が入る、つまり使える筋肉になる。ケガの予防にもなります。これに出合うまではオイルマッサージで筋肉をほぐすだけでしたが、今は毎晩、マッサージしながらマグネシウムを筋肉に入れ込んでいます。