高齢化社会が進む中、住み慣れた自宅で医療ケアを受けられる訪問看護ステーションが増加しています。高齢者の療養を支えるだけでなく、出産後の母親や乳幼児を見守る母子在宅看護など、訪問看護師の活躍の場は広がり、需要も年々高まっています。訪問看護師の仕事の魅力ややりがいなどについて、2月28日(土)開催のオンラインセミナー「訪問看護師のリアルを知る!」で、講師を務める現役訪問看護師のお二人にお話を伺いました。(2026年1月取材)
看護師・助産師 中野とも子さん
「訪問看護ステーションぶらんしゅ」管理責任者。2023年、新潟市秋葉区で「ぶらんしゅ」を助産師4人と共に立ち上げた。サービスのメインは母子在宅看護ケア
看護師 石井晶子さん
「あいびい訪問看護ステーション」管理責任者。2024年、新潟市江南区に「あいびい」を看護師5人で開設。在宅療養や介護ケアからターミナルケアまで幅広いサービスを提供
医療と生活の両面をケアする訪問看護師

――訪問看護師に転職したきっかけは。
中野さん 約20年間勤務した新潟市内の救急病院では、産科や新生児医療センターで妊婦さんや赤ちゃん、育児をスタートするお母さん、ご家族を担当していた時、退院後、お母さんと赤ちゃんがご自宅でどう過ごされているのかなあと思うことがありました。病院を退職後は行政機関で子育てに関する相談業務に携わりましたが、お母さんたちが子育ての不安を口にするのをよく聞き、何か手助けができないだろうかと考えていました。そんな時、友人の看護師から「他県では訪問看護で母子のケアをしている」と教えてもらい、新潟でもやってみようと助産師4人で「ぶらんしゅ」を立ち上げました。
石井さん 私も新潟市内の救急病院で28年間勤務していました。新型コロナウイルス感染症の流行期では、終末期の患者さんでも面会がほとんど許可されず、家族も付き添えない状況にジレンマを感じたんです。住み慣れた家で家族と最期まで過ごしたい方や、在宅医療を望まれる患者さんをケアしたいと思い、看護師の友人たちと2024年に「あいびい」を開設。訪問看護師として働いています。
利用者さんと喜びや感謝を分かち合って

――訪問看護師になって良かったことは。
中野さん ご自宅にある物を使って、利用者さんがどうやったら楽に生活できるか、実際に具体的な提案ができます。訪問看護をするうちに利用者さんの生活の質が上がると私たちもうれしい。利用者さんの気持ちに共感し、お母さんの心の安定や赤ちゃんの成長を「良かったね」と喜び合えるのはやりがいと言えますね。
石井さん 私も同じです。利用者さんが望むことを叶えるためにご家族と知恵を出し合い、病状や住宅環境などを考慮しながら看護師としてアドバイスして、良い結果を一緒に喜ぶ瞬間はかけがえのないものです。
看護だけでなく生活もきめ細かにサポート

――訪問看護の現場で、忘れがたいエピソードはありますか?
中野さん 初回訪問時は「何をしたらいいのか分からない」と泣かれていた初産の方が、何度も訪ねるうちに落ち着かれていき、数カ月後には笑顔で育児ができるようになりました。「辛い時期、次に中野さんが来るまで頑張ろう、と思って乗り越えられました」とおっしゃったのは印象に残っています。
石井さん 「介護生活が楽しかった」と利用者さんのご家族に言われたことですね。「あいびいさんがその場を明るくしてくれて、みんなで笑う時間があった。辛いことだけの介護ではなかった」と話してくださいました。利用者さん自身は、照れもあってご家族に感謝の気持ちを伝えられないことがあるんです。だから私が「ここまでしてもらって、ありがたいよね?」とご家族の前で利用者さんに声をかけた時に「うん。ありがとう」と言ってくれてうれしかったです。
一人一人に時間をかけて寄り添える

――病院の看護師さんとの違いは?
中野さん 多重課題がないことですね。目の前の利用者さんのケアに徹することができます。病院の都合ではなく、利用者さんに寄り添って時間を使えます。
石井さん 訪問した先の利用者さんにだけ関わる、濃いケア時間が過ごせます。1対1でその人を中心にケアができる。それは大きな違いだと思います。
――訪問看護の現場で改善を望むことは。
石井さん 医療関係者間でもっと情報共有ができたらいいと思います。「SWANネット」(地域の医療・介護関連従事者が患者の情報を共有できる地域包括ケアに特化したSNS)が利用できれば良いのですが、そうでない場合は電話と郵送、FAXで確認しています。
中野さん 重い病気を持った赤ちゃんだと、退院前に私たちも含めたカンファレンスをするので状況は分かりますが、お母さんの情報はほぼないんです。医師からの指示書は赤ちゃんの看護だけですが、お母さんが倒れてしまったら赤ちゃんにも影響しますからね。お母さんの情報もあらかじめあったらいいなあ、と思うことはありますね。
ワークライフバランスを大切に

――毎月の訪問看護ケアの件数は。
石井さん スタッフ5人で、月に約300件の訪問看護をしています。私は1日3~6件、朝8時半から夕方くらいまで。忙しいですが、自分がやりたい仕事なので辛くはないです。
中野さん 月に多くて100件程度ですね。
――訪問看護ステーションの管理者として、職場づくりで心掛けていることは。
石井さん スタッフが休みたい時に休める体制にしています。子どもの行事などがある時はもちろん、急に子どもが体調を崩した場合も休んでもらって構いません。また超勤にならないよう、全員にタブレットを配布し、訪問記録は都合のいい時間に書いてもらっています。困り事は一人で抱え込まず、スタッフ全員で共有し、改善策をみんなで考えるようにしていますね。
中野さん うちもスタッフ全員に小・中学生の子どもがいますので、子育てを優先してもらっています。私が代表電話を常時携帯し、問題が起きたらすぐに連絡をとれるようにしていますし、スタッフには随時こちらから声をかけ、話しやすい雰囲気づくりに努めています。
利用者さんの暮らし方を尊重して

――訪問看護での注意点はなんでしょうか。
石井さん 自分のやり方を押し付けないことですね。利用者さんのご自宅ですから、例えば部屋の換気や片付けなどを勝手にやってはいけないんです。
中野さん ご家庭の状況に応じて臨機応変に対応しなくてはなりません。利用者さんのお話にしっかりと耳を傾けることも大切です。
自主的に考え、最適なケアを創造する訪問看護師

――どのような看護師さんが訪問看護師に向いていますか。
石井さん 多重課題が苦手という看護師さんには働きやすいかもしれません。何より人が好きで、「利用者さんが何をしたいのか」をちゃんと考えられる人が適しているのではないでしょうか。
中野さん 赤ちゃんとお母さんが好きな人なら、出産・育児の経験や助産師資格がなくても問題ありません。看護師の勉強をきちんとしているのですから、訪問看護師として赤ちゃんとお母さんを十分にサポートできます。
――これから訪問看護師を目指す看護師さんにメッセージをお願いします。
石井さん 看護師として自主的に考えて行動することができ、評価が目に見えて分かる、やりがいの大きな仕事。組織のルールに縛られることなく、利用者さんとご家族のケアに専念できるのも魅力です。
中野さん 利用者さん一人一人の成長と生きていく道に、時間を区切られることなくじっくりと寄り添っていけます。病院のような夜勤もなく、時間を融通できますから、仕事と家庭生活を両立しやすいと思いますよ。

2月28日(土)13時半~15時開催のオンラインセミナー「訪問看護師のリアルを知る!」では、今回ご登場いただいた中野さん、石井さんが、さらに詳しく訪問看護師の現状についてお話しします。申し込み締め切りは2月23日(月・祝)。
問い合わせ|新潟市地域医療推進課
電話|025-212-8018(平日8:30~17:30)



