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2026.04.05 special

工房 雪椿の花びら染(代表・石山千惠さん)/加茂の春を閉じ込めて 雪椿が織りなす優しい彩り

シリーズ

assh表紙の人

エリア

中越下越/佐渡

自然が生む一期一会の色 花びら染めの魅力

うららかな陽光が差し込む、加茂市内のコミュニティセンター調理室。大きな鍋から上る湯気がもうもうと立ち込める中、そろいのエプロンを身に着けた「工房 雪椿の花びら染」のメンバーが、にぎやかに声を掛け合いながら作業をする。


ハンカチにストール、スカーフ。雪椿の花びらから抽出した染料で染めた製品は、いずれも天然色素ならではの優しいピンク色が奥ゆかしい。


組織は、加茂山公園一帯に群生し、加茂市を代表する雪椿で特産物を開発しようと、加茂商工会議所女性会の有志により、2002年に設立された。メンバーの本業は、材木店や葬儀店などさまざま。現在は9人が在籍し、石山千惠さん(84)が代表を務める。

花びら染めの技術は、ヤブツバキの群生で知られる友好都市の伊豆大島に学び、京都や山形といった県外の工房を視察するなどして品質を高めてきた。大量の花びらを煮詰め、絞って色素を抽出し、染め液に。下処理をした布を浸して染め上げ、水洗いして乾かし完成。「長くやっているけれど、思うような色が出なかったり、想像以上のものができたり。自然のものだから天候にもよるし、生地の状態にもよる。出来上がってからのお楽しみ」と石山さんはにこやかに話す。


地域の誇りを形に 女性たちの挑戦

花びらは、春先に1年分を集めて冷凍保存する。加茂市内には、ピンクや黄色など100を超える品種の雪椿が咲くというが、染め物にできるのは赤い雪椿のみ。メンバー1人あたり5㌔を目安に、毎年合計約40㌔の赤い花びらを集めるという。「開花が終わると同時に、一斉に集める。観光地の花を取るわけにいかないから、友人知人を頼ったりね。ノルマがなんぎいのよ」と、メンバーの1人は冗談まじりに話す。

花びら染めは、化学薬品などを使わないので肌に優しく、環境負荷も小さい。天然染料のため、時間とともに色合いの変化を楽しめるのも魅力。色が変わった商品を新たに染め直す「再会染め」も引き受けているといい、お気に入りを長く愛用することができる。


出かけるときには、花びら染めのスカーフを巻くという石山さん。「加茂のアピールになるでしょ」と誇らしげに笑みを浮かべる。

昨年市内で開かれた、シンガーソングライターのスガシカオさんのライブでは、ステージ衣装として絞り染めのTシャツ作りを担った。絞り染めの技法も、さまざまな文献や県外の先進地に学ぶなどして試行錯誤し、新商品開発にも意欲をみせる。

「加茂に注目してもらいたいという思いで24年やってきて、今や私たちが一番の古株。これからも、花びら染めを受け継いでくれるといい」と石山さんは穏やかにほほえんだ。

工房 雪椿の花びら染
プロフィール
2002年、加茂商工会議所女性会の有志により「雪椿の花びら染研究会」設立。10周年を機に、名称を「工房 雪椿の花びら染」に改め、商品製作を通して加茂の魅力を広く発信している。

住所|新潟県加茂市幸町2丁目2-4(加茂商工会議所内)
TEL|0256-52-1740