アフリカの風薫るベーカリー 異文化と地域をつなぐ
幾何学模様が描かれた赤土の壁に、屋根に樹皮を頂いた東屋。店先にはマラウイの国旗が翻り、鮮やかなターバンをまとったスタッフがにこやかに出迎える。新潟市西区のアフリカンベーカリーカフェナミテテは、創業以来、アフリカをテーマにした店づくりを続け、現地の文化や食材を紹介している。

パンは約100種類が並び、中でも、東アフリカで食べられている揚げパン「マンダジ」やアフリカをイメージした「酋長」「キリマンジャロの雪」といったパンはひときわ素朴で温かみのある風情だ。中でも珍しいのは、アフリカの食材「バオバブの実」を材料に使った「バオバブシリーズ」。バオバブの実は栄養価が高く「アフリカのスーパーフルーツ」と呼ばれているという。

店主の工藤知子さんは新潟市出身。26歳だった1989年、広い世界を見ようと、青年海外協力隊の臨床検査技師としてマラウイに赴任し医療技術協力に携わった。
現地では、貧困や医療体制の未整備により、多くの救えるはずの幼い命が失われていく現実を目の当たりにし、国際協力や開発問題への関心を深めた。「あまりにも簡単に、目の前で幼い命がなくなっていく。どうしてもっと早く、と思っても、救急車があるわけじゃない。すぐそばに病院があるわけじゃない。貧困対策の答えを見つけるために、もっと学ばなければと思った」
帰国後は都内の大学で開発学を学び、2003年からはザンビアで国際協力の仕事に従事した。マラウイで同じ協力隊員として出会い、帰国後に結婚した夫の智さんはパン職人の道を選び、日本各地やザンビアにも同行し現地でもパンを焼き続けた。

2007年、新潟市内にナミテテを開業。「国際協力をなりわいにする夢を、ずっと夫が支えてくれていた。今度は『自分の店を持つ』という夫の目標を手伝おうと思った」
誰もが自分らしく生きるために 障害者就労支援に尽力
当初は国際協力の仕事へ戻ることも考えていたが、店で出会った重度自閉症の少年をきっかけに考えが変わった。障害のある人たちが地域で活躍できる環境づくりに取り組み始め、障害者雇用を進める企業ネットワーク「みつばちネットワーク」の活動にも長年携わり、多様な人が活躍できる地域づくりを進めている。
また、アフリカの文化や課題を身近に感じてもらおうと、「アフリカンフェスinにいがた」を開催。音楽や雑貨、食を通して交流の場を生み出している。

工藤さんの原動力は「小さな声を見捨てたくない」という思い。アフリカでの国際協力も、障害のある人たちの就労支援も「小さな声に出会った」ことから。どちらも「誰もがなりたい自分になれる社会をつくりたい」という願いにつながっている。パン店の経営はそのための手段であり、本当に届けたいのは「地域の元気」だ。
若い頃には閉塞感を抱いていた故郷にも、離れてみてその豊かさに気付けた。四季折々の美しさや、踏み込み過ぎない人々の距離感にも心地よさを感じるようになった。「新潟は、もっと住みやすい地域になれる。人と人とがつながり、新しい価値に出会う場をつくる挑戦を、これからも続けていきたい」と力を込めた。
工藤知子さん
【プロフィール】
くどう・ともこ 新潟市出身。青年海外協力隊員としてマラウイに赴任し医療支援に従事。ザンビアでの国際協力などを経て、2007年にナミテテをオープン。障害者雇用の推進やチャリティイベントのほか、ヨガ講師としても活動し、多方面から地域に元気を届けている。
https://namitete.com/



