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2024.05.08 food

緊張と弛緩 器選びがもたらす究極の癒やし

「心調う器選び」

うつわセラピーなどという言葉はおそらく存在しないが、器を扱う時間は不思議と心が癒えるもので、器に刻まれた手仕事の跡を感じ、それぞれの質感の違いを大切に扱う時間は、日々の喧騒から心を引き離し、調えてくれるひとときだ。

その日の食材や食卓をイメージして、器を取り合わせ、見た目良く料理を盛り付ける一連の流れは「・・道」とも言えるような一種厳かな時間で、食材と料理人に感謝と敬意を払い、もてなしの気持ちで準備する大切な儀式だ。同時に集中力と想像力が高まり、他の一切を忘れ、没頭する時間を与えてくれる。

自ら料理して、自身が食べる場合でも、その精神は同じである。

昨年、私物の器を持ち出して「器を愉しむ会」なるものを開催した。参加者は用意された料理と自分の気分や好みに合う器を手に取り、組み合わせ、盛り付けて、それぞれの器選びを鑑賞しながら、そろって食事をした。

 「これほど集中力を使う時間になるとは…」
 「盛り付けに必要な繊細さに、気づけば息を止めっぱなしだった」

そんな声と同時に、皆晴れやかな表情。

器を扱うことに限らず、緊張と弛緩の組み合わせは、究極のリラックスをもたらすもの。器合わせにおいては、集中と没頭ののち食事、という緩む時間につながることで、質の高い癒やしとなるのではないか。

普段の食事準備にそのような緊張感は必要ないが、意識をすれば心調う学びの時間を生活の一部として取り入れることが可能だ。

忙しなく過ごしている時ほど、私は料理や盛り付けに時間をかけて、器に向かいたくなるのはそのせいかもしれない。

「好き」や「楽しい」に集中する小さな時間の積み重ねは、自己満足の層となり、日々の満足度の積み重ねが自信となって蓄積し、心丈夫な自分を作る。

食卓を毎度華やかに、見た目良く設えることを推奨するわけではないが、時折でも意識的に意図的に、器選びから食事時間を始めることは、心に何かをもたらすと信じている。

今回は漆の菓子盆を折敷に見立てた。
漆器に器を重ねる際は傷がつかないよう、柔らかな底面の器を選ぶと良い。

動画では器の場所を微妙に調整しているが、器を動かす際は傷つけないよう、器を浮かせて移動させる気配りを。漆器の黒とガラスの透明感は相性良く、春夏にオススメの組み合わせだ。

~献立~
・コシアブラの混ぜ込みおむすび ・鮭の西京漬け ・独活の天ぷら ・ウルイのお浸し ・きゅうりの塩麹漬けとカニカマの和物 ・山三つ葉の白麻婆 ・甘い玉子焼き ・マスカルポーネいぶりがっこ ・みつ豆


【プロフィール】
高橋香織さん

千葉県出身。スウェーデン等、海外経験も長く、日本の魅力を再認識。食を愉しむ暮らしをインスタグラムで発信している。産まれたての雛の雌雄を判別する初生雛鑑別師の資格を持ち、全日本初生雛雌雄鑑別選手権大会で2度優勝している。新潟県見附市在住。