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2024.08.04 special

「umicafeDONA」店主 柘植香織さん / 自然にも人にもサステナブル 心満たす海辺の時間

シリーズ

assh表紙の人

エリア

中越

ITベンチャー勤務からUターン 故郷でカフェ経営

遠浅の海と長い砂浜が延びる柏崎市の高浜海水浴場。海沿いを走る国道352号線沿いの高台に、柘植香織さんが営む「umicafeDONA(ウミカフェドナ)」はある。

店は大開口の窓いっぱいに海が広がり、開放感いっぱい。水平線に沈みゆく夕日や、晩秋の荒々しい波しぶきなど、日々趣を変える海を間近で眺めることができる。時には沖にイルカの群れが現れることもあるという。

ヴィンテージの家具が並ぶ店内は、波音が響き、時間がゆっくりと流れる雰囲気。「海が主役なので、内装は景色を邪魔しないように、ナチュラルにしている。一日中、ずっとカフェで過ごす方もいるくらい。気兼ねなくくつろいでほしい」と柘植さんはほほえむ。

柏崎市出身の柘植さんは、大学卒業後、県内の銀行に勤務。その後都内のIT系ベンチャー企業に転じ、総務担当として立ち上げから関わった。連日のように終電で帰宅するほどハードな日々を過ごし、結婚を機に退社。自然が豊かな環境で子育てをしようと、県外出身の夫とともに2006年、Uターンした。

飲食店を開くと決めたのは、東京で勤務していた頃、激務の合間に好きな料理を学ぼうとフードコーディネーター養成校に通ったのがきっかけ。飲食業を志す受講生らに刺激を受け、退職後はカフェなどで働いて経験を積んだ。

現在の店舗は、海の近くの物件を探して出合った築25年の民家。かつては地元農家が繁忙期に拠点としていた別荘だったが、2007年に発生した中越沖地震で被災した後は使われていなかった。地域は斜面が崩落するなど大きな被害を受け、店舗も床が傾いた状態だったが、2年半ほどかけて修復し、2012年にオープンした。

旬の素材、調理法 体いたわるメニューで元気に

人気メニューは二十四節気ごとにメニューが変わる「玄米プレート」。季節の野菜と柏崎産の玄米を使い、その時季に体が欲する食材や調理法でメニューを組み立てる。夏至には、たくさんの夏野菜とスパイスを使ったカレーなどで体を調えるメニュー。「昔の人が農作業の目安としていたように、旧暦に合わせるのがしっくりきた」と柘植さんは話す。

夫婦でマリンスポーツを楽しむなど、海辺の暮らしを満喫する。海が穏やかな日にはスタンドアップパドルボード(SUP)を楽しむ。柘植さんの夫も、サーフスポットとして知られる大湊地区などでサーフィンに興じているという。

近くの浜辺には流木や貝殻、メノウなどが流れ着くといい、柘植さんも漂着物を集めるビーチコーミングにいそしむ。4年前からは、海で拾ったガラス片「ビーチグラス」を地域通貨として扱う取り組み「ビーチマネー」も導入した。ビーチマネーは、「海をきれいにしよう!」を合い言葉に神奈川県の湘南エリアで始まった環境活動。ビーチグラスを探すことで、海岸の清掃活動につなげたいと願う。「ハッピーに楽しく取り組みながら、海岸をきれいにするきっかけになるといい」とにこやかに語った。


柘植香織さん
【プロフィール】
つげ・かおり 柏崎市出身。都内IT企業勤務を経てUターン。2012年に「umicafeDONA」をオープン。マリンスポーツやビーチコーミングなど、海辺の暮らしを楽しみながら、海の豊かさを守る活動にも取り組んでいる。