国の重要無形文化財であり、2009年に日本の染織工芸として初めてユネスコ無形文化遺産に指定された「小千谷縮」。約270年前からの製法を今も受け継ぐ「片貝(かたかい)木綿」。この二つの素材を着心地良く、デザイン性の高い洋服にして世界に発信しているのがKIRUMONO(キルモノ)プロジェクト「田園」です。発起人である「越後織物研究舎」の西田謙也さんと、タッグを組む「K.kenkyusya」のデザイナー・瀬上貴司さんに、新潟日報メディアシップで開催された展示販売中にお話を伺いました。
見た目も機能性も高い伝統織物の洋服
ディスプレイされたトルソーがまとう洋服は、ジャケットやワンピース、スカートやパンツなど、どのアイテムも魅力的なデザイン。試着してみると天然素材ならではの滑らかな肌触りと、動きやすくするために細かく配慮された工夫に驚かされます。伝統を身に着ける誇りと、上質な素材に包まれる喜びも味わえる、一生ものの洋服です。
西田さんは阿賀野市の「絣(かすり)Shop西田」を経営し、久留米絣の洋服や天然素材の雑貨などを販売してきました。もともと呉服店を営んでいたため、在庫として持っていた小千谷縮と片貝木綿の反物を使い、オリジナルブランドを作ろうと決意。旧知のデザイナー・瀬上さんに相談したことからプロジェクトはスタートしました。
瀬上さんは日本の代表的なモードブランド「ヨウジヤマモト」で長くデザイナーを務め、独立後、築後地方(福岡県)の伝統織物「久留米絣」の洋服を手掛けています。修業時代、パリコレなどで海外経験を積むうちに、「西洋の洋服と日本の着物を融合し、日本人にしかできない物を作りたい」と考えるようになったといいます。西田さんと一緒に小千谷縮と片貝木綿の産地に出向いた瀬上さんは、手間暇を惜しまない昔ながらの製法で作られた生地に大きな可能性を見いだします。
技術を継承、未来につなぐ挑戦
伝統織物を世界に通用するKIRUMONO(着る物)として未来につなげる、という目的で意気投合した二人。「小千谷縮も久留米絣も田園地帯で暮らす人々の農閑期の手作業で生まれた」ことから「筑越同盟 田園」を結び、瀬上さんが「K.kenkyusya」、西田さんが「越後織物研究舎」として新たな挑戦へと一歩を踏み出しました。
「シボ(しわ)が特徴の小千谷縮は麻100%で上品な仕上がりになります。発色も素晴らしい。一方、片貝木綿は綿100%で落ち感や肉厚感などが独特で仕立て映えがします。何十年も前に製造された、ゆったりしたスピードの織機を使っているので生地に空気が含まれ、ふんわりとした風合いになるんですよ」と瀬上さん。「両方とも洗濯機で洗えます。小千谷縮は軽く、洗濯しても渇きが早いので旅行などに重宝しますね。麻素材ですが冬でも着られる方が多いんです」と西田さん。
着物の反物の幅は約38㎝、一反の長さは12mほど。その規制があるからこそ、新たな発想が生まれます。立体裁断構造やバイアスカットを施すことで、柔軟性と美しいシルエットを実現。また、型紙は収集率(生地から実際に使う部分の比率)80%以上と、生地の無駄を最小限に抑えています。
着物を着る人が減少する中、洋服生地として伝統織物の需要が維持できれば、大切に守り育ててきた技術の継承にもつながります。「生き残るためには時代に合わせたアップデートが必要です。私は呉服店の三代目でしたが、約25年前に店の形を変え、久留米絣の洋服を扱うようになりました。地域の伝統織物を洋服として生かす挑戦を全国の呉服店にも広げていきたい」と言う西田さんは、「これから仲間になってくれる呉服店といつか共同でイベントをしたい」と夢を語ってくれました。
豪農の館「北方文化博物館」で展示販売
11月には新潟市江南区の「北方文化博物館」で「田園」展示販売を実施。小千谷縮と片貝木綿をはじめ、久留米絣や江戸小紋など伝統織物の洋服が約100点そろいます。愛着を持って年齢を重ねても着続けられる洋服と出合える貴重な機会。見て、触れて、試着して、伝統をまとう体験をしてみてはいかがでしょうか。
<イベント概要>
開催日時:11 月7 日(木)~9 日(土)10:00~18:00(予定)
会場:北方文化博物館 西門広場前 旧レストラン(新潟市江南区沢海2-15-25)
入場無料
展示販売イベント「田園」実行委員会
実行委員長:絣Shop西田 代表 西田 謙也
絣Shop西田
住所:新潟県阿賀野市中央町2-10-10
TEL:0250-62-2293 / 090-8796-6514(西田)
営業時間:10:00~19:00
休業日:火曜日・水曜日