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「朝の白湯習慣」

起きがけにゆっくりと一杯の白湯を飲むようになって久しい。
早起き必須の仕事に就いているが、元来早起きは苦手である。
起床という私にとって苦痛を伴う毎朝を、何か良い心象の行事に転換できないかと、すがるような気持ちで白湯を飲み始めた。

鉄瓶で沸かす白湯が市民権を得ているように感じるが、定義としては一度沸かした湯のことで、何で沸かすかは問題ではない。
時間に余裕のない日は電気ケトルのスイッチを入れるだけ。
余裕がある日は土瓶でゆっくりと。
沸騰してから蓋を外したまま10分ほど火にかけておく。


湯が沸く間に、その朝の気分に合う湯呑みと片口を選ぶ。
ケトルから片口に一度注ぐのは、温度を少し下げて幾分飲みやすい温度にするためだが、例えば土ものの片口に白湯を通すと沸いたままを湯呑みに直接注いだものより柔らかな口当たりになるような気がする。
注ぐという行為を一つ挟むことで気持ちもゆったり落ち着くから不思議だ。


以前器選びは「道」にも通じるようだと書いたが、ある意味これも「道」の精神に通じるもののような気がしている。
片口から湯呑みに白湯を注ぐ時は自然と背筋が伸びる。
ゆっくり深呼吸をして、湯呑みに白湯を注ぎ、少しずつ啜るように口に含む。
身体の中に温かな流れを感じ、身体と頭が目覚めていく。
いつしかこれさえ行えば良い一日になるような、おまじないのような儀式になっている。

日々丁寧な暮らしをしようなどとは思っておらず、そうありたいという意識もさほどなく、ただただ毎日自分がどうにか少しでも機嫌良く過ごせるよう、騙し騙し生きているようなものだ。
自分さえ機嫌良く過ごせれば、大袈裟ではなく世界は平和なのだ。人にも優しくなれる。

お気に入りの片口と口当たりの良い湯呑みやぐい呑みを一揃えするだけで、一日のはじまりが心地良いものになり、案外人は簡単に幸せになれるものだから大いに薦めたい。


【プロフィール】
高橋香織さん

千葉県出身。スウェーデン等、海外経験も長く、日本の魅力を再認識。食を愉しむ暮らしをインスタグラムで発信している。産まれたての雛の雌雄を判別する初生雛鑑別師の資格を持ち、全日本初生雛雌雄鑑別選手権大会で2度優勝している。新潟県見附市在住。