息をのむほど美しい白磁に、藍色の顔料で描かれた草花。静謐(せいひつ)で凛としたたたずまいに心奪われる。
日本の食卓になじみ深い「染付」の器。白磁に藍色の顔料でさまざまな文様が描かれた、歴史ある焼き物だ。この伝統技法を現代の食卓にも合う器へと昇華させるのが、新潟市中央区に工房を構える長谷川由香さん。学生時代に学んだ瀬戸焼の技術を生かし、器を作り続けている。「気分に合わせて器を選べて、食卓にもなじむような絵柄を描いています。昔は日常に寄り添った器を作ろうという思いが強かったですが、最近は豊かな暮らしや上質さを感じさせる器づくりを心掛けています」とにこやかに教えてくれた。

キキョウの花をモチーフに描いたマグカップ3,080円。一点一点微妙に色合いが異なり、ついつい集めたくなってしまう
呉須(ごす)という藍色の絵の具は鉱物を調合して作られている。仕入れた呉須でそのまま描くこともできるが、鉄など天然の鉱物を入れて独自に調合することで、自分だけの色を生み出すのが長谷川さんのこだわりだ。オリジナルの呉須で絵付けをし、透明釉(ゆう)をかけて焼き上げることで、唯一無二の藍色とつやのある滑らかな手触りに仕上がる。シンプルながらも深い美意識が宿る器は、使うほどに愛着が増すものばかりだ。

長谷川さんが作り続けてきた代表作、三つ葉のクローバー柄の長方皿3,630円。手書きによる味わいを楽しめるのも染付の魅力
長谷川さんの作品は、取り扱い店のオンラインショップや企画展などで購入できる。細部まで緻密に描かれた模様や、表面を削って生み出される「しのぎ」と呼ばれるリズミカルな凹凸は、ぜひ手に取って触れてみてほしい。線の強弱、藍色の濃淡が少しずつ異なり、それぞれ違った表情が面白い。

花を優しく引き立てる花器は写真の(大)6,050円のほか、(小)5,170円も用意。和洋問わず合わせやすい立体的な模様がアクセント
長谷川 由香さん
新潟市中央区出身。都内専門学校、名古屋高等技術専門校 窯業校で陶芸の技術を習得。卒業後、愛知県で15年間陶芸を続け、2005年に帰郷。地元沼垂で開窯し、全国各地で展示会を開催。磁器に絵付けをする染付が特徴。
新潟日報メディアシップ1階「インフォメーションセンターえん」にて展示販売:10/3(金)~12/2(火)
長谷川由香
インスタグラム|@some_tsuke_h.yuka
オンラインショップ|https://www.utsuwa-hanada.jp/(暮らしのうつわ 花田)
販売店|うつわと岩手の工芸 せき宮(岩手県)
■企画展
10/4(土)〜12(日)
「陶・2人展」ギャラリー栞(新潟県新発田市)
12/6(土)〜14(日)
「冬の暮らし展」tetote(新潟市中央区)