新潟県上越市高田地区に現存する日本最古級の映画館「高田世界館」。動画配信全盛の現代にあって、映画館を盛り立てようと日々奮闘する支配人の上野迪音さんに、映画の楽しみ方を教えていただきます。
ついに来ましたね、この時期が・・・。そう、雪の季節が。
毎年のことなのに今更何を言ってるんだと思われるかもしれませんが、人間というのは忘れやすいもので、夏の暑さにヒイヒイ言ってるうちに冬のことなどすっかり頭から抜けてしまい、来るとわかっていてもやはり「来てしまったか・・・」という落胆まじりの思いを抱いてしまいます。
初雪を見ても「わぁー雪（目キラキラ）」なんて思わないところに根の深さを感じてしまいます。子どもは喜びますが、私なんか「うわああああ雪（目どんより）」ですもんね。
それもそのはずで雪が降ると確実に客足に影響し、３割減どころか５割減、酷い時だと10割減になり、事実上映画館を暖めただけ（つまり来場者なし）、みたいな日もあるわけですから、いくら雪国育ちで雪に慣れているとは言えど雪に対する感情が晴れやかなものであるはずもありません。このモヤモヤした感情に言葉をつけるとしたら、そうですね、「恨み」とか「怨嗟」に近いかもしれません・・・(笑)
降らなかったら降らなかったで「おや？どうしたのかな？」と恋しくなったりもするので、ややこしい感情だなあとも思います。温暖化の影響で全く降らない年もありましたしね。今シーズンは大雪になるとも言われたりしてますが、ほどほどでお願いします、神様！本当に！
2021年の大雪。この時は１週間の営業停止を余儀なくされました…
実は去年修繕した屋根の雨漏りの箇所がぶり返しておりまして、またまたピンチが到来しております。そんなところに大雪が降られたらたまったものではありません。空調設備（暖房）もまだ壊れたままですし、一体どうしたものやらと頭を抱えております・・・。
さてそんな気苦労が絶えない状況ではありますが、現実はこちらを待つことなくどんどん進んでいきます。今年実施したクラウドファンディングで購入費用を募ったTシャツプリンターが遂に導入されました。試行錯誤しながらではありますが徐々に稼働も始まっております。
刷り上がったＴシャツ
しばらくはいただいたご支援に対する返礼品としてのTシャツづくりが主な作業となりますが、これから商品化に向けて進んでいくこととなります。
なおこちらの機械、扱いが非常にデリケートで、湿度・温度は完全管理の上、種々のメンテナンスも毎日のように行わなくてはなりません。インクも固まってしまうので使い続けなければなりません。まさに始めたが最後、もはやTシャツ屋さんの道へと突き進んでいくほかありません(笑)
センサーもついているので異常があるとアラートが表示され、放置してると（インターネットで管理されているので）メーカーからも電話が来てせっつかれるというような状況です。正直映写機よりも扱いが大変で、Tシャツの機械に振り回されている状況です。映画館なのに！(笑)
チャップリンの『モダン・タイムス』(1936)にベルトコンベアから次々に流れてくるナットをチャップリンが延々と締め続けていくという有名なシーンがありますが、まさにそんな感じです！なお映画では作業の連続でチャップリンの気が狂って病院送りにされてしまうという・・・
とはいえ映画館を安定的に運営していくために収益化を図るという大事な仕事でもあります。この事業により忙しさも異次元の段階に突入した感がありますが(笑)、お客さんが喜ぶ姿を想像しながらTシャツ作りに励みたいと思います！
さて高田世界館では現在話題作『侍タイムスリッパー』を上映中です。小さな映画館から火がついて爆発的に全国に広まったという点では数年前に同じく大ヒットした『カメラを止めるな！』とも状況が似ております。いずれも大きな予算で作られたものではなく出演している俳優の面々も超有名人ではありませんが、アイディア一つでミニシアター／シネコンという枠を超えてヒット作が生まれるというのは映画界としては喜ばしいことです。作品の出来栄えも素晴らしいですので、ぜひ年末年始に高田世界館に見に来てくださいね！
映画「侍タイムスリッパー」
最後となりますが、今年もいよいよ残りわずかとなりました。
例年にも増して皆様からのご厚意を肌身に感じた年となりました。来年はこの想いをバネに、更なる飛躍を目指して駆け抜けたいと思っております。
それでは良いお年をお迎えください！
高田世界館支配人 上野迪音（うえの・みちなり）
上越市出身。2014年より日本最古級の映画館「高田世界館」の運営に携わる。映画文化を地域に根付かせようと、さまざまな取り組みを行っている。
