佐渡の生き物や暮らし 柔らかなタッチで生き生きと
とぼけた表情のコブダイや、木に集っておしゃべりを楽しむような鳥たち。身近な草花や生き物たちを描いたイラストは、一つ一つに物語があるかのよう。佐渡市在住の画家でイラストレーター、小川温子さん(34)の作品は、植物や生き物に注がれる優しいまなざしが印象的だ。
東京都出身の小川さんが初めて佐渡を訪れたのは20歳のとき。都内の美大に在学中、先輩に誘われて旅をした。「流れる時間が違う」と感じ、地元の人々の温かさにも引かれ何度も通うように。
移住は4年前。佐渡のモチーフをポストカードにしたのをきっかけに依頼も増え、当時は毎月通うようになっていた。「新型ウイルス禍で行けなくなったとき、とてつもなくストレスを感じて、悲しくて。これは良くないと思って移住を決断した」と話す。
佐渡の魅力について、「人間的な文化がたくさんあるのがすごく好き。お祭りとかで、みんな一緒に盛り上がるのがいい。佐渡にいると創作意欲もどんどん湧いてくる」と目を輝かせる。
作風も広がった。トキやコブダイのほか、サドモグラやサドアザミなど固有の動植物、街並みや鬼太鼓。イラストはマグネットやキーホルダー、Tシャツなどにし、島内の雑貨店やオンラインショップで販売する。
太鼓芸能集団 鼓童による音楽イベント「アースセレブレーション」ではロゴ制作を担当。キーホルダーが入ったカプセルトイ「鼓童ガチャ」などのグッズも手がける。「基本的には地元の人も楽しめるグッズを意識している。地元の人が好きなものは、きっと外の人にも良さが伝わる」と力を込める。
ほかに、佐渡でよく見かけるモチーフで気に入っているのは軽トラック。「棚田に行くとおじいちゃんおばあちゃんたちみんなが乗ってて、身近な存在。軽トラの絵のトートバッグ、人気なんです」とほほ笑む。
たくさんの人に助けられ 夢はイラストで島内制覇
能の師範と知り合ったのを機に「宝生流」の稽古を始めたり、宿根木でたらい舟の船頭を務めたり。積極的に人と関わり、佐渡暮らしを楽しむ。「いろんな人に助けてもらっている。一回会ったら友達って思っているので、『どーもー』みたいな感じで行ってます」と笑う。
お気に入りの場所を問うと、しばらく迷った後、ドンデン高原を挙げた。「かつては牛を放牧していたところ。両津湾も加茂湖も一望できて、すごく景色がいいんです。一人で集中したいときはドンデン山荘(ドンデン高原ロッジ)に泊まって山ごもりすることも」。ほかにもお気に入りスポットが次々と挙がり、熱心に魅力を語る。
目標は島内の全集落の絵を描くこと。「見る人が温かい気持ちになれるような絵を描きたいと常々思っている。私の絵をきっかけに、こういうのがあるんだって佐渡を知ってもらえたらうれしい」とはにかんだ。
小川温子さん
【プロフィール】
おがわ・あつこ 東京都出身。多摩美術大学卒業。県内外で個展を開くほか、音楽フェスティバル「アースセレブレーション」で題字やグッズデザインを担当するなど、温かなイラストで佐渡の魅力を発信している。
小川温子さんのポストカードを3名様にプレゼント!小川温子さんが佐渡の風景を描いたポストカードを3枚セットで3名様にプレゼントします。トキやたらい舟はもちろん、黒塗り板囲いの家々が並ぶ昔ながらの街並みや、蛇行して開墾された棚田など、佐渡の魅力が優しいタッチで描かれています。
※絵柄は選択不可です
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