紅葉が見頃を迎える季節、お庭巡りを楽しんでみませんか。邸園文化伝道師として日本庭園の魅力を伝えている藤井哲郎さんに、日本庭園の見方や楽しみ方、覚えておきたいマナーを伺いました。県内4カ所の名庭園の見どころとともに紹介します。
カフェと庭、二つの視点を楽しんで
大倉庭園(新潟県新発田市)
市島酒造(現・王紋酒造)創業家の邸宅に、新発田市出身の実業家・大倉喜八郎の庭を再現して造られたと伝わる「大倉庭園」。喜八郎の別邸「蔵春閣」が同市に移築・公開されて1周年を迎えたことを記念し、2024年に一般公開された。
枯山水回遊式の園内には創業家の離れが残り、カフェとして活用されている。季節ごとに緑や紅葉が楽しめ、景色を眺めながら数時間過ごす利用客もいるという。
道路拡張の際に庭の一部を移動し、屋内からは滝石組み(組み上げた石で滝を表現したもの)を正面に望めないため、庭に出て散策しながら鑑賞するのがお勧めだ。庭園の奥は雰囲気が変わり、茶室に付随する「茶庭」風の造りが見られる。また喜八郎が所有していた石塔が、園内に移築されている。

庭に入ってすぐの左手に滝石組みがある。園内に花は植えられていないが、専任の庭師が手入れするこけと樹木の緑が庭を彩る

紅葉は10~11月にかけて見頃を迎える

カフェの隣の座敷は、入園料を払えばフリースペースとして利用でき、窓の外には、つくばい(背の低い手水鉢)や石灯籠など、茶庭風の風景が広がっている

カフェには、庭を見渡せる大きな窓が設けられている。お薦めは窓に面した3人掛けの席。秋は紅葉、冬は雪をまとった木々を楽しめる
大倉庭園カフェ
住所|新潟県新発田市諏訪町3-1-17[地図]
電話|0254-22-5150
時間|9:00~16:00(4〜10月は~17:00)
定休|無休
料金|庭園入園料 大人300円、小学生150円(カフェ利用の場合は無料)
枯山水で表現する多彩な世界
椿寿荘(新潟県田上町)
田上町指定文化財の「椿寿荘」は、豪農・原田巻家の離れ座敷だ。3年半をかけて造られ、1918(大正7)年に完成した。大広間は三の間、二の間、上段の間と続き、それに面して主庭が広がっている。
庭は枯山水回遊式で、京都から招いた庭師が飛び石で水の流れを表現した。その奥に立つ五重の石塔は、仏教の宇宙観で聖なる山とされる須弥山(しゅみせん)を表す。周囲に配された石は、須弥山を囲む山と海「九山八海(くせんはっかい)」に見立てたもの。
大広間の先にある奥座敷は、高床の下を水が流れているように見立て、その流れに乗る舟を模している。庭へ降りる階段も、舟から下りるかのような造りで、遊び心が感じられる。

中央後方に小さく見えるのは須弥山を表す五重の石塔。藤井さんは「仏の教えが、須弥山から川に見立てた飛び石の流れに乗って鑑賞者へ届く構図」と読み解く

紅葉は例年11月中旬から11月いっぱいが見頃。11/30(月)までは奥座敷で「椿寿荘秋のランチ」を提供する(入館料込み3,100円、2日前の16時までに電話予約が必要)

庭に臨む奥座敷は舟に、欄干は舟の手すりに見立てている。枯山水の川を舟で進むような気分で鑑賞したい

庭の中ほどにある紅葉の大木の手前には、三体の仏像に見立てた「三尊石(さんぞんせき)」がある
椿寿荘
住所|新潟県南蒲原郡田上町田上丁2402-8[地図]
電話|0256-57-2040
時間|9:00~16:00
定休|水曜(10・11月は無休)、12〜1月
料金|大人400円、小・中学生300円
【こぼれ話】豪農「椿寿荘」で名建築を楽しもう
かつて本県には、全国有数の大地主が何軒も存在しました。紙面で紹介した椿寿荘(ちんじゅそう)の原田巻家もその一つ。大正時代、7代目当主は不況に苦しむ小作人に仕事を提供するため、離れ座敷「椿寿荘」の建設に着手しました。その名は、古代中国で霊木とされた椿に「寿」の字を重ね、子孫繁栄や来訪者の長寿を願うものと伝わります。
日本三大名工と称された宮大工・松井角平(かくへい)を招き、全国から銘木や銘石を集め、数年をかけて築いた邸宅と庭には、ぜいを尽くした美しい空間が広がっています。豪壮な大名玄関は、まるで時代劇の世界に入り込んだよう。邸内には解説板が設けられ、見どころが分かりやすいのもうれしい配慮です。名家の見学が初めての人にもお薦めです。
(asshライター 和田 明子)
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