紅葉が見頃を迎える季節、お庭巡りを楽しんでみませんか。邸園文化伝道師として日本庭園の魅力を伝えている藤井哲郎さんに、日本庭園の見方や楽しみ方、覚えておきたいマナーを伺いました。県内4カ所の名庭園の見どころとともに紹介します。

教えてくれたのは 邸園文化伝道師 藤井哲郎さん
庭屋一如(ていおくいちにょ)研究会主宰。新潟日報カルチャースクールで茶室の見方の講師も務める。伝統建築と日本庭園の魅力を伝え、後世に残す活動に取り組む。建築と庭園を一体で味わう独自の鑑賞法を提唱している。
01 主賓になったつもりで
藤井さんによると、庭園では多くの人が入館者の視点で鑑賞しがちだという。「庭は、屋敷の当主が客人をもてなす大切な舞台。自分が招かれた主賓になったつもりで見てほしい」。一番の鑑賞地点は、床の間の前など、主賓が座る座敷の上座。長寿を願って縁起の良い石組みを配すなど、そこからの景色を読み解くことで、当主が庭に込めた思いが見えてくる。

北方文化博物館(新潟市江南区)の広間の床の間前から望む庭園。右手の書院窓を通して見える景色が最高のもてなしとされる。着座して低い視点で楽しみたい。屋内を素足やストッキングだけで歩くのは控え、靴下を着用しよう
02 庭園と建物を一体に
屋内から庭を眺めると、どうしても柱や建具が視界に入ってしまう。藤井さんは、これらも庭を美しく見せるよう計算して配置されていると説明する。「庭屋一如とは、庭園と建物を一体のものとして味わう、日本独特の美意識です」。庇(ひさし)とそれを支える柱や、書院の窓が額縁の役割を果たし、庭を一枚の絵画のように見せるなど、建物を造る時から、庭の見え方について考慮されているのだ。

藤井さんは「庭への視線を遮らないことが、庭屋一如の空間的な一体感を生む」と語る。新潟県関川村の渡邉邸では柱を細くしたり、柱の間隔を広げて庭を四曲屛風(びょうぶ)絵のように見せたりするなど 、随所に工夫が凝らされている
03 庭に出てみよう
屋内からだけでなく、庭園を実際に歩いて楽しんでほしい。池のほとりなどに置かれている平たく大きな石は、一番のビューポイントとされる「礼拝(らいはい)石」だ。藤井さんは「不老長寿の仙人が住む蓬莱島(ほうらいじま)、神仏を象徴する石組みなどを拝む場所であるとともに、180度見渡した時に庭の一番良い眺めを楽しめる場所」と解説する。庭を散策する時はこけや地面を傷めないよう、かかとの低い靴がお薦め。また屋内からしか鑑賞できない庭園もあるため、確認が必要だ。

手前に見える大きな石が礼拝石。人が立つことを想定し、多くは平らに造られている。藤井さんは「全ての庭にあるわけではありませんが、私の感覚では、公開されている伝統的な庭の7割ほどに見られます」と話す

石橋を羽、中央の岩を頭、背後の松を尾に見立て、一体で鶴をダイナミックに表現した鶴島。庭に配されたものの多くには意味があり、それを読み解くと庭園鑑賞がさらに楽しくなる。画像の礼拝石、鶴島はともに、北方文化博物館の大庭のもの
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