新潟県上越市高田地区に現存する日本最古級の映画館「高田世界館」。動画配信全盛の現代にあって、映画館を盛り立てようと日々奮闘する支配人の上野迪音さんに、映画の楽しみ方を教えていただきます。
さて 前回の掲載では映画館の歴史について長々と書かせていただきましたが、今回はもう少し軽いノリでお届けしたいと思います!
まずは上の写真をご覧ください!
一体何の写真かと思われるかもしれません……。足元に散乱する色とりどりの紙片、そして中央にぬらりと立つ金色の物体…。
こちらは高田世界館で今や恒例となった、「マサラ上映」と呼ばれるお祭りイベントの一幕です。インド映画を現地スタイル(紙吹雪を撒く、歓声をあげる、etc.)で鑑賞するというところから始まった同上映ですが、いつの間にかインド人ですらやらないところまで来てしまいました……。お客様も様々なお召し物(コスプレ)で参加され、紙吹雪にまみれながら映画を楽しまれています。ちなみに金色の物体はオスカー像を模したコスプレです。
このように歴史ある映画館の重厚さとは相反するように、近年に入ってから突飛な展開を見せるようになってまいりました。明治発祥の日本最古級の映画館…とはいえ、大衆娯楽を扱う施設。それは水物のようなもので社会の変化によって浮き沈みもあり、決して映画文化が健全な形で続いてきたわけではありません。
現在も映画不振の延長線上にあると言っても過言ではなく、普通にやったってまずお客さんは入らない。現在はSNS 全盛の時代、なんとか話題を作ろうと苦慮した結果、他にも映画館らしからぬ催しが繰り広げられることとなりました。
映画の上映に合わせて映画に登場するキャラクターの雪像を作ったり、映画館そのものを撮影スポットとして打ち出したり。地元メディアに取り上げられた他、これらの試みはSNSでも大きな話題となりました!
果たしてそれで運営の好転につながっているかどうか、まだ答えは出ていない状況ではありますが、それでも地域の人々の楽しみになったり、全国にいる映画ファンに向けて高田を紹介するような機会になったりしているのは事実です。
実は、映画館のスタッフはこれまで私とアルバイトスタッフ数名で運営していたのですが、 この4月からは正職員が新たに1名加わりました。この映画館不遇の時代にあって、それは大きな決断です。この映画館はいうなればベンチャー企業のような体制です。若い経営体です。収益を上げること、盛り上げること、必要なこと、不用意な(!)こと。そうしたことが 渾然一体となってグラグラと煮えたぎるマグマのような状況です。何が正解かわからないようなこの時代にあって、試行錯誤はこれからも続きます。
*6月15日(土)にマサラ上映『K.G.F』開催します!怖いもの見たさで一度いかがでしょう…
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高田世界館支配人 上野迪音(うえの・みちなり)
上越市出身。2014年より日本最古級の映画館「高田世界館」の運営に携わる。映画文化を地域に根付かせようと、さまざまな取り組みを行っている。