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2024.08.26 special

情熱のインド音楽と映画 まだまだ終わらない“熱い”夏

エリア

上越

新潟県上越市高田地区に現存する日本最古級の映画館「高田世界館」。動画配信全盛の現代にあって、映画館を盛り立てようと日々奮闘する支配人の上野迪音さんに、映画の楽しみ方を教えていただきます。


8月も下旬です。高田世界館では毎年夏に、戦争にまつわる映画を特集としてプログラムしております。今年は話題作『オッペンハイマー』などを皮切りに、合計7本の作品で構成されております(いくつかの作品は終了しましたが、現在も引き続き上映中です)。

戦争映画に限らず、特集上映というのは映画館のカラーを特徴づけるものであり、その編成作業については、全国のミニシアターの番組編成を担うスタッフ(高田世界館では私が行っております)がそのセンスを光らせ腕を振るう瞬間でもあります。

キュレーションとも言われるこの作業は、映画館業務においては花形であり楽しいことであることに間違いないのですが、集客の予測と編成の妙味とで天秤にかけながら常に頭を悩ませているものでありますので、苦しいと言えば苦しいです() 一歩間違えれば映画館を傾けることにもなりかねませんし・・・。

よく「このラインナップは上野さんのご趣味ですか?」と聞かれることがあるのですが、そんなことは稀です!すったもんだの果てに最終的には採算のことが頭によぎり、その波に押し込まれて穏当なラインに落ち着くことが多いですね・・・。

毎月毎月の上映ラインナップを決めること自体がキュレーションとも言えるのですが、やはり複数の作品を数珠つなぎにして「特集」まで押し上げるというのは特別なことでもあります。他の映画館が斬新な特集を組んでいるのを見たりすると、「さすが!」「やるな・・!」などと感銘を受けたりすることもしばしばです。

普通に売れる作品を順繰りに並べていった方が効率よく収益を上げられることも多いのですが、やはりその館の考え方や、もっと言えば「精神」に触れられたりすると嬉しくなったりするものです。

皆さんもぜひ、あちこちの映画館がどのようなセレクトをしているか目を凝らしてみてくださいね。

より深く世界を掘り下げ、総体の文化として届けるために

さて高田世界館ではインド映画を上映することが多いのですが(これもキュレーションですね)、映画だけでなく音楽も含めた広い意味での文化として享受できたら素晴らしいだろうと、ここ数年来(日本人演奏者含め)インド音楽のコンサートを開催しております。

去年はなんと、インド現地で(それどころか世界各地で)活躍するインド人アーティストを招いての演奏会となり、全国各地からお客さんが集まって大盛況となりました。

昨年行ったインド音楽の演奏会

実は今年もまた91日にコンサートを企画しており、なんと今回もインド人アーティストたちが出演することになっています。今年のポイントは、来日する演奏者たちが映画の中で出演しているインドの音楽映画『響け!情熱のムリダンガム』を上映し(実際に彼らがスクリーンの中で演奏しています!)、その上でコンサートを観られるという趣向となっています。

映画をきっかけに音楽の世界への道筋を作り、新たな発見や刺激を受けてまた映画の方にも広がっていく。そうしたつなげ方もまた、キュレーションと言えるのではないかなと思います。(なお公演前日にもインドの伝統音楽を題材にした『シャンカラーバラナム 不滅のメロディ』という作品もプログラムしています。)

特に劇場としての形態を残したままの高田世界館はその両方を実現できるという稀有な会場です。建物の雰囲気も相まってコンサートも特別な空間となることでしょう。ちなみに本公演のイベントオーガナイザーの方曰く、高田世界館は「一番(南インドの)チェンナイのコンサート会場に雰囲気が近い」とのことです。

残暑はまだまだしばらく続きそうですが、高田世界館の熱い夏もまだまだ終わりそうにありません!

▼南インド古典音楽公演の詳細
http://takadasekaikan.com/archives/19821


高田世界館支配人 上野迪音(うえの・みちなり)
上越市出身。2014年より日本最古級の映画館「高田世界館」の運営に携わる。映画文化を地域に根付かせようと、さまざまな取り組みを行っている。

高田世界館 http://takadasekaikan.com/