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2025.01.27 special

雪国メンタリティは返上 明るい未来見いだす1年に

エリア

上越

新潟県上越市高田地区に現存する日本最古級の映画館「高田世界館」。動画配信全盛の現代にあって、映画館を盛り立てようと日々奮闘する支配人の上野迪音さんに、映画の楽しみ方を教えていただきます。


明けましておめでとうございます!
・・・と言ってもすでに元旦から1カ月が経とうとしておりますが、皆さまよいお正月を迎えられましたでしょうか?

ちなみに私どもは映画の上映をしながらクラウドファンディングの返礼品であるTシャツやトートバッグの制作と、その梱包作業に明け暮れておりました・・・。量が多いだけに、それはもう大変な作業でした!

返礼品のトートバッグ作り

さて、今年一年を占う初月の営業は、ヒット作『侍タイムスリッパー』などの頑張りもあり、冬場にも関わらずまずまずの成績で終えることができました。年がら年中、そう都合よくヒット作に巡り合うことはできないので、いつ息切れしてもおかしくないのですが、ドキュメンタリー作品としては異例のヒット作『どうすればよかったか?』がこれに続き、なんとか無事に済んでいるという状況です。雪が少ないのも奏功しましたね。

新年一発目の作品、『レッド・サン』。おめでたい感じがあります!

今年の冬はどうしてしまったのか、多雪という割には高田には雪があまり降らず、気温も高い日が続きました。
もう2月に入ろうとしておりますが、危機を感じるような雪の降り方は、この冬まだ一度も経験してないように思います。
あの毎朝ドキドキしながら窓の外を覗く(早朝から雪かきをしなくてはならないかどうかの判断がそこでなされます)といったようなこともなく、なんとなく「まあ、大丈夫でしょう」という不思議な楽観が心の内にあることに気づきます。これは、雪国民としては特異なことです!

降っても10cmほどの積雪。これは序の口ですね(急な雪国マウント)

雪国民といえばあの鬱々とした鉛色の空に明るい未来を見出すことなく、こんな日常がずっと続くんだという妙な達観とそれに伴うタフなメンタリティを持ち合わせているものですが(偏見ですが!笑)、数日待てば晴天を迎えるようなこんな日々が続こうものなら、万が一にも屈託のない明るい雪国民が生まれてしまうかもしれません・・・!(笑)

我が心の故郷、高田の原風景(個人差があります)※2022年撮影

話を戻しますが、映画『どうすればよかったか?』は色々と異例づくしで、ヒットは元より普段高田世界館に見られないような若い方々も来られているのが特徴です。この作品は統合失調症を患った自らの家族をビデオカメラで撮影したもので、内容としては重たかったりもするのでこの人気ぶりに少し驚いております。

映画「どうすればよかったか?」

人気の理由はどうあれヒット作というのは嬉しいもので、もちろん営業利益に関わるものですからそれだけでありがたいのですが、普段常連さんや上越市外から来る映画ファンの方で支えられている高田世界館にとっては、なかなか見られない一見さんが多く訪れる機会にもなっています。むしろ地域の方はシネコンの方に流れてしまうことも多いので、近くに住んでいる方こそ「(知ってはいたけど)初めて入った」というパターンも多くあります。

とはいえ、誰もが知っている作品をやったところで地域のお客さんが来るかといえばそうではなく、数年前にとあるSF名画(某「未来に戻る」やつです)をやった時には大コケした記憶があります。しかも大きく枠を設けての3部作一挙上映でしたから、入らなかった精神的ダメージは大きいものでした・・・(苦笑)

何はともあれ、映画の上映というのはある人と出会うチャンスとも言えます。たとえ来場者数が見込まれないものであっても、未来への投資(そういうときに「種まき」という言い方は素敵ですね)の意味で子どもも観られる作品を入れたり、これからのミニシアターを担う若者のために少しエキセントリックな作品を忍ばせたりと、まだ見ぬ観客に向けてプログラムを組んだりもしております。

エキセントリック枠の『ハイパーボリア人』(3月頃上映予定)

雪国メンタリティを発揮して鬱々と暗い将来を思い描くことは得意ではありますが、雲の切れ間に差し込む陽光のような明るい将来を見出すようにせねばなりませんね!

さて、高田世界館の2025年は例年通りの波乱含みであろうかと思いますが(何が来るかわからないから恐怖です・・・)、今年もどうぞよろしくお願いいたします!
皆さまにおかれましては安寧な日々が続く一年になりますように!

今年一つ目の懸案、エアコン改修工事の様子。先日無事に終わりました!


高田世界館支配人 上野迪音(うえの・みちなり)
上越市出身。2014年より日本最古級の映画館「高田世界館」の運営に携わる。映画文化を地域に根付かせようと、さまざまな取り組みを行っている。
高田世界館 http://takadasekaikan.com/