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2024.04.22 special

映画文化担い113年 明治の面影に現代の息吹

シリーズ

高田世界館支配人 映画アバンギャルド

エリア

上越

 新潟県上越市高田地区に現存する日本最古級の映画館「高田世界館」。動画配信全盛の現代にあって、映画館を盛り立てようと日々奮闘する支配人の上野迪音さんに、映画の楽しみ方を教えていただきます。


 高田世界館は上越市高田の街にある明治44(1911)年に建てられた建物で、現存する映画館としては日本最古級とされています。かつて高田に陸軍が駐屯した(明治41年〜)関係で、街がその経済効果を受けて大きく発展していく中、娯楽施設として建てられた経緯があります。元は芝居小屋「高田座」として始まり、その後大正時代になって映画が大衆娯楽として日本でも広まっていく中で館内にスクリーンが貼られ、映写機が持ち込まれることで映画館として転用されるようになりました。その時に名乗った館名が「世界館」であり、今の名称もそれを受け継ぐ形となっています。

 以後、100年以上にわたって映画館として営業を続け、その間に映画産業の斜陽化、中心市街地の衰退、地震の影響や老朽化など様々な課題が舞い込んで来つつも、今なお映画文化の発信地として高田の街に存在しています。

 さて現在では文化財にも指定され、街の観光施設としても定着(この4月の観桜会でも多くの方が訪れました)しつつある高田世界館ですが、昭和から平成にかけて成人映画館として営業していた時期もあり、今のような表立った営業はしておりませんでした。その後成人映画館としても成り立たなくなり取り壊しの危機にも遭うわけですが、建物の価値に気づいた市民によって保存活動が起こり、まちづくりの中で活用されるようになりました。今はその活動の中で生まれたNPOによって映画館が運営されています。

 今年でもって高田世界館の歴史は113年に渡ります。私が支配人として高田世界館で働くようになってから10年、NPO体制になってからは15年が経つので、およそ10%。まだまだヒヨッコだと思っておりましたが、少しずつ私たちが運営する時代が長くなってきました。映画館を引き継いだ当初も今も何をしたらいいかわからない模索の時期が続いておりますが、また新たな歴史が積み重ねられてきています。このコラムではそうした現在進行形で生まれ続けている歴史の一端を、街の風景と魅力的な映画のお話とともに書いていければと考えています。1年間、どうぞおつきあいください。


高田世界館支配人 上野迪音(うえの・みちなり)
上越市出身。2014年より日本最古級の映画館「高田世界館」の運営に携わる。映画文化を地域に根付かせようと、さまざまな取り組みを行っている。

高田世界館 http://takadasekaikan.com/