新潟県上越市高田地区に現存する日本最古級の映画館「高田世界館」。動画配信全盛の現代にあって、映画館を盛り立てようと日々奮闘する支配人の上野迪音さんに、映画の楽しみ方を教えていただきます。
今月はジメジメとした日々が続きましたが、いよいよ夏本番ですね!
夏といえば海、海といえばサメ、サメといえば「サメ映画」ですね!
……おや、サメ映画をご存知ない?それは大変もったいないことです!
今やサメ映画といえば日本の映画界・映画ファンが注目する人気ジャンル。ジョーズ(1975)などといったメジャーな作品ではなく、近年に入って(主に北米で)生まれた新しい潮流の作品群を指します。それらの多くは低予算で作られ、チープな演出とCGとも言えないような映像効果を駆使し、他ジャンルを旺盛に飲み込みながら(SF×サメ、エクソシスト×サメ等々)、既成のルールを打ち壊すような自由な世界観を繰り広げています。
これが日本の観客にもヒットし、根強いファン層を生み出しながら国内でも新作サメ映画の製作が相次いでいるという状況です。高田世界館でもサメ映画の需要が高まり、昨年からいくつかの作品を上映しておりますが、どこからともなくファンの方が集まってくださるなど、ドル箱コンテンツを抱えていない私たちのような小規模映画館にとってはまさに救いの神とも言えます。
この夏にも高田世界館ではサメ映画の公開があり、その名も『温泉シャーク』!日本で作られた新作で、古代から蘇ったサメが温泉地で次々に人を襲っていく…という内容です。
ニッチな作品と侮るなかれ、クラウドファンディングアワード2023受賞、ミニシアターランキング(7/5〜7/7の観客動員数)でも公開1週目で第1位を獲得するなど全国の映画ファンが熱い視線を注ぐ作品となっています。
高田世界館では7月20日に公開初日を迎え、この日はサメ食文化のある上越ならではのフード販売や映画館前に特設したプールでのフォトブースなど、他の劇場では決して見られないような特色あるイベントが実施されました。
サメ映画の力を借りつつ、地域の方々を呑み込…否、巻き込みながら自然と賑わいが生まれ、高田世界館らしい一幕となりました。
映画『温泉シャーク』は8/2(金)まで上映がありますので、気になる方はぜひ温泉ならぬ深淵なるサメ映画の世界に飛び込んでみてください!
さて、話は打って変わって映画館のデジタル映写機のことです。前回の記事ではデジタル映写機を導入するメリットとその反面としての高額費用負担について触れました。10年ごとに設備更新しなければならないこと、それが小規模映画館にとって多大なる負担になっているということ、そしてそれは自助努力ではどうにもならず、一部の映画館では閉館を検討せざるをえないという現実があります。
実は高田世界館でも映写機の交換時期を迎え、直近でも故障が発生しておりました。そして他の例に漏れず、いかに設備更新の資金を捻出するかという問題に直面しております。
そんな中で「#ミニシアターへ行こう」という映画館応援プロジェクトが全興連(全国の映画館が加盟する組合の組織)の方から立ち上がり、それと連動する形でクラウドファンディングを立ち上げる運びとなりました。
なおすでにクラウドファンディングは始まっており、多くの方にご支援いただいております。始まる前はこんなに反響があるとは思ってもおらず、驚くばかりです・・・。10月31日まで実施しておりますので、引き続きご支援いただけましたら幸いです!詳細は下記のリンクよりご覧いただけましたら幸いです。
https://motion-gallery.net/projects/takadasekaikan-next
高田世界館を「生きた」映画館として残すために、ご協力のほどよろしくお願いいたします!
高田世界館支配人 上野迪音(うえの・みちなり)
上越市出身。2014年より日本最古級の映画館「高田世界館」の運営に携わる。映画文化を地域に根付かせようと、さまざまな取り組みを行っている。